The Silo Effect
The Peril ofExpertise and the Promise of Breaking Down Barriers
ジリアン テット Gillian Tett 2016/2
元FT(米国版)編集長による組織論。専門化された現代組織では、全体が見えないがゆえに起こる悲劇があるとしています。
最初に取り上げているサイロは、職員15万人を抱えるニューヨーク市。
2001年9月にワールド・トレード・センターに急行して初めて、消防、警察、救急部局がお互いの無線やトランシーバーで連絡が取り合えないことが判明した p.15
そんな組織の中に眠っていた、4つのデータを組み合わせることで、住宅火災の発生しやすい地域を特定できるようになります。
- 住宅ローンの不履行
- 建築基準法違反
- 建物の築年数
- 貧困度
第2章は、ソニー。ストリンガー氏が引用する元IBMガースナー氏の言葉。
People don’t do what you expect but what you inspect.
第3章は、リーマンショック時のUBS。チューリッヒ大学ストローマン教授の言葉p.117
the biggest losers in a financial crisis are not those who have exposed themselves to major risks with their eyes wide open, but rather the ones who believed [they had] their affairs wellunder control.
世界の頂上を目指したUBSは、EYやオリバーワイマンなどに相談。アドバイスは、
証券化と呼ばれる分野に参入しなければならない。とりわけ証券化の中でも住宅ローン債券に関する分野が良い
“mortgage bond”は、住宅ローン債券?かはさておき、そんなことがあったのですね。これも部分最適だったかもしれませんが、誰も全体を見れていませんでした。
第4章は、経済学の例。
リーマンショックについて、エリザベス女王が原因を聞いた時の経済学者、ルイス・ガリガノの答えp.147
The real issue, he argued, was not that economists and financiers were ill-intentioned or stupid; it was rather that they had been looking in the wrong places, at the wrong time.
第5章は、シカゴ警察の話、組織内に散らばっていた情報を活用し、次に犯罪が起きそうな場所の予測に成功しました。
第6章では、フェイスブック。ソニーとマイクロソフトをベンチマークし、サイロを避ける試みをしています。イギリスの進化生物学者、ロビン・ダンパーが提唱したダンパー数は、p.224
人間にとって最適な社会集団の規模は150人前後である。
150人までなら人間の脳は、社会的なグルーミングを通じて緊密な絆を維持できるが、それ以上は無理だから。FBは社員が150人を超えたあたりからブートキャンプや、ローテーションを取り入れるなどして、サイロを避ける試みをしています。
終章では、4つの教訓が提示されます。
- 大規模な組織では部門の境界を柔軟にしておく
- 所属するグループの業績だけで評価しない
- 情報を部門で独占しない
- 組織の区分を定期的に見直す
企業文化が、その組織の在り方や戦略に影響をあたえるのは、いろんなところで議論されてきましたが、人類学的なアプローチでみると、スッキリ整理できるというのは収穫でした。
では。