「視聴率男」の発想術
五味 一男 宝島社 05/7
日本テレビで「エンタの神様」など高視聴率番組を作り続けたプロデューサーのビジネス論。私は、等身大の日本人を最も知っているのは、TVプロデューサーだと思ってきました。この本で裏づけがとれた気がします。
顧客のニーズを細かく追う企業としては、セブンイレブンが有名です。しかし、そのセブンイレブンでも、「1分ごとの顧客の需要(視聴率)を追う」ということはしません。視聴率という明確な目標を達成するためには、ここまで顧客を理解しなければならないのかと思います。
たとえば、P.38で「スタジオの笑いとテレビの笑いは違う」と書かれています。スタジオでの笑いをそのまま放送すると、「編集で笑いをつけたんでしょ」と言われるのだそうです。スタジオに来る人というは、笑おうと自発的に来ている(Lean Forwardな)人であり、また、周りの人につられて笑います。自宅で寝転がりながら、独りで(Lean back)見ている人と、笑い方が違うわけです。なので、自宅で見ている人に違和感を与えないように、編集でスタジオの笑いを「消す」ことさえあるとか。こういうのは、お茶の間の顧客が見えていないとできない技ですね。
逆にp.49から書いてある「ここで笑わなきゃという脅迫感」は、考えさせられますね。他の人が笑っているのに、自分がその面白さがわからないという恐怖感が人間にはあるそうです。ここでは、アンガールズの例が出ています。最初は、どこで笑っていいのかわからなかった視聴者が、テレビの編集でつけた笑いを聞いているうちに、そのポイントで笑うようになるのだそうです。
こうした顧客を理解する努力をした上で、結果を出すために「いろんな人の立場になって考える」こと(P.166)を薦めています。ここのでは、3つのNGが出ています。第1は、世界一巨大なブタです。取材した本人は、その大きさがわかっているのですが、テレビの枠に入った瞬間、いつも見ているブタと変わらなくなるんですね。第2は、強風。これも、風自体はテレビに映りません。最後は、花の匂いのする絵本。TVでにおいは伝わりませんね。「いろんな人の立場になって考える」ことにすれば、普通のブタと一緒に撮ったり、風で吹き飛ばされそうな看板を撮ったり、レポーターに匂いを語らせたりするわけです。
ここでは、笑い話になりますが、自社の製品の素晴らしさを開発した人はわかっていても、顧客にはさっぱり伝わっていないという例は、そこらじゅうにあるのではないでしょうか。
この本には、企業経営を考えるヒントがあると思いました。
では。(^^)/^