【本】暗闘

暗闘

山口敬之 幻冬舎 2017/1

元TBS記者山口氏による官邸手記。前作「総理」に続く第2弾。安倍・トランプ会談背景が詳細に記されており、参考になりました。ヒラリー当確と読んでいたところから、最初にトランプ氏との会談を実現したところは、どうやったら、こんな逆転が可能なのかわからなかっただけに、事情がわかりました。

安倍外交は、着実に成果を挙げていますが、その背景が、官邸主導の外交でありました。本書では、個人名を挙げて、どのような動きがあったのかが記されています。たとえば、河井克行補佐官の訪米p.53。

まず、知らなかったのは、外務省が、トランプ人脈を続けていたこと。森健夫北米局長のコメント p.38

外交官は予想屋ではないので、大統領になる可能性がゼロではない人物がいるなら、いずれにしても『当選した場合に備えて』準備をしなければならないのです。

トランプ氏が日本安保タダ乗り論を唱えた翌日には、佐々江大使がジェフ・セッションズ上院議員を訪ねています。p.43

官邸主導の外交については、第4章 官邸と外務省の暗闘。これは、最近できたものではなく、拉致被害者の救済に立ち上がった頃からの外務書への不振に根ざしていることも書かれていました(p.109 )。

第5章では、対露交渉について触れています。首脳会談は、「北方領土が返ってこなかった=失敗」のような報道が多かったですが、どの分野に進展があったのかよくわかりました。

読み終えて、トップが変わると、これほどまでに外交は変わってしまうのかと思いました。日本の外に住む日本人として、外交の巧拙は生活に直結します。もし、トランプ大統領が、日本から軍を引き、中国が尖閣諸島で攻勢を強めていたら、シンガポールに住む日本人も、影響ゼロではいられなかったでしょう。

ビジネスとして学んだ点は、トップへの緻密なプロファイリングによって、会談で結果を出す点です。

では。