野口 悠紀雄 日本経済新聞出版社 2017/1
『仮想通貨革命』の続編。今回は、ビットコインよりも、ブロックチェーンが世界をどう変えるかという視点で書かれており、Tapscottの”Blockchain Revolution“に論旨は近いです。英語だとあんなに分厚い本になるのですが、日本語でスッキリまとめているところはさすが野口先生。たった2年でここまで進んだかという印象。もう、我々の世代ですら、この変化から逃げられないですね。正面から向き合うよりありません。
第1章は、概観。ブロックチェーンとは、取引履歴が記録された台帳の仕組み。いくつか技術的な説明が続きます。主な技術の一つが、ハッシュ化。入力値をハッシュ関数を使って変換すること。ハッシュ関数とは、与えられた原文から固定長の疑似乱数を生成する演算手法。
ブロックは時系列で「チェーン」としてつながっているため、データを改ざんするには、過去のブロックもすべて変えなければならなりません。連鎖する取引データをネットワークの各参加者が管理することで、データの改ざんなどの不正を難しくしています。
この結果、ブロックチェーンは、管理者の信用によらずとも、安心して経済的な取引ができるようになります。
この技術が世界を変えるという論旨なのですが、それは、インターネットが世界に与えた影響との比較で語っています。インターネットは、当初、社会をフラットにすると期待されていました。しかし、現実には、Microsoft、Google、Facebookなど、少数の大企業が世界を支配するようになっています。
インターネットの世界では、何が正しいデータかを確かめることが難しかったため、大組織が信頼の源になりました。ブロックチェーンは、そのアンチテーゼであるわけです。
しかし、それが期待通りになるかは、第3章、ブロックチェーンが以下の2方式のどちらになるか次第なのだとか。ひとつが、パブリックブロックチェーン。もう一つが、プライベートブロックチェーン。銀行などの大組織が、プライベート・ブロックチェーンを利用して、効率性を高めれば、引き続き大組織の時代が続きます。
第2章は、ビットコイン。仮想通貨の時価総額は、こちら。
時価総額戻ってきてますし、ビットコイン以外の通貨も、出てきてますね。
その後、銀行、証券、保険、IoT、政府などへの応用を俯瞰。
第9章では、「自律分散型組織」(DAO:Decentralized Autonomous Organization)を議論しています。組織のマトリックスがでてくるのですが、経営者も従業員もいない組織を想定する時代になっているのですね。
非常に勉強になりました。
【参考】
ブロックチェーンを用いるプロジェクト(p.36)
- Circle
- Hellobit
- Bitwage
Bitwageは顧客に対して様々な通貨での給与受取を可能にする - Ethereum
- ビットコインの次に時価総額が大きい仮想通貨。スマートコントラクト対応
- hyperledger project
- Linux Foundationはブロックチェーン技術の普及に向けて、新たな共同研究プロジェクト
- Lightening Network
- ビットコインのブロックチェーンに負荷をかけず、より高速かつ小額な取引を可能にするためのもの。1satoshi単位(0.0001円)といった、超少額支払いが可能
- Open assets
- ビットコインの取引データ上に追加のデータを入れることで、コイン、株式などの資産を表現するためのプロトコル
- Proof of Existance
- ドキュメントがある日時に存在していたということを証明するために作られたサービス
- factom
- 大量の書類やデータの記録を、素早く安く、ブロックチェーンに負担をかけずに行うことができる
- Everledger
- Blockverify
- Provenance
- Chainfy
- Ascribe
- Assetcha.in/