佐藤 優 文春新書 2016/10
シリーズ第3弾。今年は、リーダーのあり方が問われた年でした。ポピュリズムが世界を席巻し、エリート層に対する大衆の不満が爆発しました。p.18
今日、エリートやリーダーのあり方が以前と大きく変わってきているのは、経済のグローバル化、すなわち新自由主義の浸透と深く関係しています。格差が拡大し、階層が固定化していくなかで、エリートと国民の間の信頼関係が崩れ、民主主義がうまく機能していないのです。p.19
民主主義は、エリートの責任感と国民のエリートへの信頼感によって支えられるものなのに、民主主義の基盤が崩れかけています。p.27
世界を席巻してたポピュリズムを取り上げられます。その先陣を切ったのは、サルコジ前大統領として、エマニュエル・トッドの批判を紹介しています。p.38
トッドは、サルコジの特徴として、「思考の一貫性の欠如」「知的凡庸さ」「攻撃性」「金銭の魅惑への屈服」「愛情関係の不安定」という5つの資質を挙げています。
人を育てるうえでの組織の重要性が回顧され、エリートのナルシシズムが批判されます。
第2章は、独裁者について。プーチン大統領の観察。
倉庫番が、突然、代表取締役社長兼会長になってしまった。プーチンがKGBを退役した時は中佐でした。(中略)そんな人だから、オリンピックのドーピング問題でも「他国もやっている」と言い放ってしまう。p.56
金正恩については、北朝鮮には、キリスト教的なものがあると指摘しています。p.68
第3、4章は、アメリカ。新旧エリート入れ替わりによる混乱を予測しています。
民主主義が機能不全に陥っている今日において、「諮問会議」のような政策決定のあり方は、先進国に共通の現象です。p.118
第9章は、リーダー育成。
日本の首相にしても、一昔前までは、一つの課題に取り組めばよかった。竹下政権にとっての消費税導入というように、「一内閣一テーマ」で良かったわけです。
ところが現在は、それでは通用しません。複数の問題に同時に対応しなkればならないからです。p.222
リーダーの変質について。
小泉政権あたりを境目にして、リーダーをめぐるパラダイムが変わってしまったのかもしれません。かつてのような全人格的なリーダーが存在しにくくなっている。p.228
リーダーが現れてきているのは、宗教があるか、あるいは「敵」のイメージがあるところです。アトム化していない、耐エントロピー構造があるところだけに、リーダーが出ている。イギリスにはリーダーはいないが、スコットランドにはいる。沖縄にもいる。p.231
リーダーが育つには、中間団体が大事だとしています。p239
人間が「群れをつくる動物」として「組織」と「リーダー」を必要とする存在であることを改めて認識する必要がありますね。p.240
そのリーダーとは、
ナルシシズムの肥大した根拠のない全能感を持つような指導者は必要ない。民衆の前にへりくだることができ、弱い人々とともに進むことができるリーダーが、本当に強いのである。p.244