【本】The Zero Marginal Cost Society


The Zero Marginal Cost Society: The Internet of Things, the Collaborative Commons, and the Eclipse of Capitalism
限界費用ゼロ社会―< モノのインターネット>と共有型経済の台頭

by Jeremy Rifkin   St Martins Press 2014/4
米国の文明評論家による「共有型経済」に関する論考。論旨は、冒頭にあるとおり。

The Capitalist era is passing…not quickly,but inevitably. A new economic paradigm — the Collaborative Commons — is rising in its wake that will transform our way of life. p.1

その変化も時間軸を示しています。

Although the indicators of the great transformation to a new economic system are still soft and largely anecdotal, theCollaborative Commonsis ascendant and, by 2050, it will likely settle in as the primary arbiter of economic lifein most of the world.

こうした社会に移行するには時間がかかり、その移行も、必ずしも、スムーズではありません。

第一部では、限界費用ゼロ社会とは何かを解説。産業革命以降の社会変化をたどることで、現在進行中の共有型経済を理解することができます。
原動力となったのが、IoT。

The IoT is the technological “soul mate” of an emerging Collaborative Commons. p.18

この変化が、社会を変えていくという論旨です。

In the coming era, both capitalism and socialism will lose their once-dominat hold over society, as anew generation increasingly identifieswith Collaboratism. p.19

第2部では、限界費用が減る例を説明しています。エネルギー、ものづくり(3D印刷)、教育など。MOOCとしては、Courseraを紹介していました。コンピュータに代替される仕事やプロシューマーの台頭にも触れています。

第3部では、Collaborative Commons (協働型コモンズ)の影響を論じています。コモンズは、封建時代のヨーロッパにあった概念。農民たちは、牧草地や、水車などを共有し、農産物を共有しました。エンクロジャーにより、農民が都市に流出し、資本主義が発展したわけですが、著者は、限界費用がゼロに近づくことで、新しいコモンズが生まれると主張しています。

第4部では、Social Capital (社会関係資本)と、Sharing Economy (共有型経済)について論じています。所有から利用中心の社会への移行を論じるときに象徴となるのが自動車。自動運転については、怖がる向きもありますが、

Automotive entingeers, however, point out that 90 percent of automobile accidents are caused by human error. p.230

のだそうで、自動車が共有される社会が近いことを解説しています。

2つ目の例が医療。

Health care, which was traditionally a private relationship between dctor and patient — inwhich the physician prescribed and passive patient followed the physician’s instruction — has suddenly been transformed into a distributed, laterally scaled, peer-to-peer relationship in which patients, networked Commons to advance patient care and the health of society. p.241

3つめは、広告。アメリカには1,530億ドル、世界には4,790億ドルの市場がありますが、所有から利用を中心とした社会では、広告も変わらざるを得ません。

その後、資金調達、働き方の変化を論じた後、冒頭のような結論につなげています。

以下、感想ですが、私はこうした限界費用の低下を、資本主義がさらに発達する原動力と感じていいました。たとえば、Uberが、巨額な資本調達をして、一気に世界市場を獲得しようとしているのを見れば、資本の論理を実感しますし、コモンズができているとは思えません。自動車は共有されるかもしれませんが、所有者はいます。むしろ、トヨタの子会社が、自動運転車の最大の所有者になるかもしれません。

3Dプリンタが発達した先に、個人が自動車が造る未来は、私には見えません。2050年も、トヨタかテスラか誰かが、生産設備を寡占しているように思います。

市場を通じた価格メカニズムも、一層、精緻になるのではないでしょうか。その商機も資本家は逃さないでしょう。

また、エネルギーについても、分散型の再生可能エネルギーが、限界費用をゼロにするというのも、納得はできませんでした。インドの成長を見た後では、とても、分散型の再生可能エネルギーだけでは、あの民衆を満足させられないと思います。

IoTの社会への影響というとても、興奮する話題を扱いながら、どうもアニマル・スピリッツに欠けるように思いました。しかし、とても大きなビジョンですので、自分が何を勉強スべきなのかはよくわかる本です。


参考
http://toyokeizai.net/articles/-/89717