Coming Apart: The State of White America, 1960-2010
Charles Murray Crown Forum 2012/1
邦題 階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現
アメリカンエンタープライズ研究所研究員である著者のアメリカ白人社会分析。新上流階級と新下流階級が台頭し、階級間の交流のない階級社会になりつつあると指摘しています。
スーパーZIPとは、居住者の平均所得や大学卒業率が、最高ランクである地域(郵便番号)のこと。こうした地域が全米に882ヶ所あります。p.78 63%の成人が大卒。平均年収が144千ドル。こうした地域に暮らす高学歴、高収入の人々を「新上流階級」と呼んでいます。推定人数は240万人。
Washington PostがSuperZipを検索できるようにしています。
http://www.washingtonpost.com/sf/local/2013/11/09/washington-a-world-apart/
p.82にハーバード・ビジネススクール卒業生の居住地区分析が載っています。スーパーZipへの集中がわかる図になっています。
新上流階級が固定化する要因としえ、Homogamyを挙げています。p.61 高学歴の人同志が結婚するケースが増え、認知能力が高い人同士の結婚で認知能力が高い子供が生まれる確率は有意に高いとしています。p.66の表には、両親の最終学歴と子供のIQがあります。その結果としてその子供が高学歴を得て高収入を得るというわけです。
反対に、60年代以降、増加した低学歴、低所得層を新下流階級と定義し、第7章以降、比較分析しています。著者は、新上流階級が住む町をベルモント、新下流階級が住む町をフィッシュタウンと呼び、結婚、勤労、犯罪、信仰などの切り口で、比較しています。様々なデータが「2つの町(国)」の分断を示しています。
たとえば、結婚率p.154。 新下流階級では、60年代は80%以上だったのが、50%を割っています。生涯未婚率も、昔は1桁だったのに、今は25%に迫る勢い。離婚も30%を超えています。両親が揃っていない過程で育つ子供は2割を超えています。結果、生みの親と暮らしている子供は35%以下。新上流階級は、こうした指標でも、なんとか踏みとどまっているのです。
差が際立つのが受刑囚のデータ。新下流階級に集中しています。
宗教の世俗化は、先進国共通の傾向ですが、新下流階級の宗教離れが顕著です。かつては、勤勉だったアメリカも、
In the 1960 census about 9percent of all Fishtown men ages 20-64 were not in the labor force. In the 2000 census, about 30% of Fishtown men in the same age range were not in the labor force. p.216
結果、貧困層以上の収入を稼げないFishtown の男性はも3割に達しています。p.227 シングルマザーも3割。
以下、感想です。1980年代までにアメリカを訪れたことがある人は、こうした現状に驚くのではないでしょうか。トランプ候補の躍進も理解し難いかと。しかし、こうした社会の変化を受けて、著者は、ウォールストリート・ジャーナルに寄稿しています。
トランプ旋風を支える米国の新下流階級
http://jp.wsj.com/articles/SB11865717880025093900504581541353800594690
似たようなことは、他国でも起こっているのだと思います。SNSが高学歴者同士の結びつきを強め、近所づき合いをしなくても、それなりに満たされてしまうようにもなるでしょう。参考になりました。
[参考]