なぜこのタイトルになったのかは不明だが、続昭和史。相変わらず、学ぶところが多い。
第1章は、731部隊。細菌戦に対して「聖断」が出ていたことを知りました。
第2章は、ノモンハン事件(1939年)。日露戦争後の34年間、実戦が経験がない軍隊で出世するのは、事務能力の高い人間=官僚という指摘。明治維新以来の仮想敵国であったのに、ジューコフの赴任の意味を理解できなかった諜報力。
第3章は、敗戦。太平洋戦争開戦時、ソ連争奪が関ヶ原との見方は、p.94。アメリカからソ連が得ていた支援物資は、
1941年10月から1945年4月まで、トラック42万7千台、戦車1万3千輛、航空機6千7百機、砲弾2千2百万発、銃弾9億9千万発、そして軍靴5百5十万足など
第五章では、昭和陸海軍の組織体質と、それを継承している現
代日本の官僚組織、厄介なメンタリティを的確に捉えていたのが、勝海舟 p.177
忠義の士というものがあって、国をつぶすのだ。
以外に知らなかった海軍の特徴はp.214
海軍は陸軍と違って組織の規模が小さいから、実ンたちが国家の骨幹になろうなんて考える者は少ないんです。要するに技術者集団であって、政治的ではない。
SONYにつながる考察。帝国海軍が通商破壊をやらなかった理由の一つは、点数制。
戦艦や空母を沈めれば50点、巡洋艦なら30点。これに対して輸送船ですと5点だったかな。p.217
日本軍がロジスティックスを軽視する理由はこちら。
アメリカ軍がロジスティックスを重視するのは民主主義国の軍隊だから、という面もあります。レーション(兵糧)にしても、日本陸軍のように、軍票を渡して現地調達して来い、といったやり方では、兵隊が言うことを聞かないのです。p.217
官僚の縦割りについては、海軍がロジスティックスを手伝わないので、陸軍が船艇母艦あきつ丸を造ったというエピソードが紹介されています。
現場(戦争)から離れると、受験エリートが跋扈する一例が、1920年の海戦要務令改定。ユトランド沖海戦で、エネルギーが石炭から石油に変わり、速度と運動性にまさる軽量艦による奇襲作戦の重要性が認められたにもかかわらず、日本は「50点の戦艦をやっつける」ことしか頭にない。
この海戦要務令の発想法は、まるで受験参考書を思わせます。短期間に一点集中で、志望校の出題予想の一番配点の高い問題を突破する。海軍エリートたちの頭が、完全に受験秀才化していたのでしょう。
世界戦略の乏しさは、p.220。
本気でアメリカを征服しようと思ったら、パナマ運河を通って、ワシントン、ニューヨークを叩くしかない。しかし、「大和」「武蔵」はパナマ運河を通れないのですから、あくまでも日本の勢力圏を防衛することしかできない作戦を立てていた。
日本軍が参謀型になったきっかけを西南戦争と分析していますが、その評価はp.227
その参謀は、とにかく当面の戦闘に勝つことだけを考え、大きな戦略抗争を持つところまでは至らなかった。「war」に勝つのではなく「battle」 に勝つことしか考えていませんでした。
第6章は、現代の世界情勢。現在の中東情勢にも当てはまる点を指摘しています。印象的なのは、p.245。
われわれが一所懸命やったときには、どうしても同じような組織をつくってしまうし、責任をとらない体制をつくってしまうと考えるべきなのです。
第7章は、昭和史を武器に変える14冊
【参考】
半藤氏の結辞
http://news.infoseek.co.jp/article/honnohanashiweb_4836/