佐藤優 光文社知恵の森文庫 2016/6
元外務省分析官が語るインテリジェンスの歴史。これだけテロが世界で頻発すると、各国の情報機関の特徴にも関心が出てきます。
インテリジェンスとは、「国家が生き残るために必要な情報」。なので、軍事的に極端に強い国家はインテリジェンスが育ちにくい。優秀な情報機関として、イギリスのSISとイスラエルのモサドを挙げています。その根拠の一つとして、実念論を説明しています。p.174
実念論の立場を取ると、眼に見えないものが見えるようになる。例えば、現在もイギリスには成文憲法が存在しない(他に成文憲法が存在しないのはイスラエル)。成文憲法が存在しなくても、イギリス人の心には目に見えない憲法が存在しているのである。このような目に見えない「何か」をつかむ能力が、インテリジェンスにおいてはきわめて重要だ。
一方、冷静な評価としては、p.158
インテリジェンスは、基本的に国力に比例している。極端に国力の格差があるにもかかわらず、弱い国が強い国に対して、インテリジェンスを活用して局地戦で1、2回勝利することはあっても、最終的に勝利を収めることはできない。
中国は、現実的な脅威としています。p.213
歴史上、5隻以上の航空母艦を運用した実績がある国あ、世界で2つしかない。米国とわが大日本帝国だ。21世紀中に中国が、5隻以上の航空母艦を運用し、軍事力を背景に帝国主義政策を露骨に推進することは間違いない。
ビジネスマンでも役立ちそうなこととしては、
「秘密情報の98%は公開情報の中に埋もれている」 p.216
以下、感想です。小国のシンガポールが、諜報機関に力を入れるのも頷けますね。シンガポール政府は、2015年の11~12月にバングラデシュ人の男27人を逮捕。このうち26人は送還され、残る1人はシンガポール国内で服役している。容疑は、バングラデシュでのテロを実行するための犯行資金をシンガポールで集めていたこと。4月にも8人を同容疑で拘束し、大半を強制送還しました。そして、今年7月にダッカでのテロ。丁寧に公開情報を追っていれば、予想はできたかもしれません。
では。