小池 正一郎 幻冬舎 黄金律新書 2015/5
小池先輩の資産運用本。非常に実務的で参考になります。これから海外に口座を持ってみようという人には、最適な本の1冊でしょう。
全体の感想は、「日本版ビッグバンは遠くになりにけり」です。ネット証券など、利便性が格段にあがったものもありましたが、結局、アジアの金融センターになりきれなかった。本書の主旨とは異なりますが、Tokyo が世界の投資家を惹きつけるということにはならなかったのを感じます。
シンガポールで読むと、香港と比較してしまいます。シンガポールに口座を開設する最大の魅力は、本書に書かれていない「地の利」になります。習近平主席の一存で何かが起こるということは、2,600km離れていればありません。例の牛舌線のその外になります。先日、マレーシアのコタキナバルに行った時に、地元の人が、中国の脅威を語っていましたが、シンガポールでそのようなことはありません。
いくつか補足するとすれば、第一に、海外に投資するのであれば、それなりの金額が必要ということ。先日、シティ・シンガポールが非居住者向けの口座で、口座維持手数料が免除される預金額を20万USDに引き上げました。
ま、毎月50USDの口座維持手数料を払えばいいのですが、それぐらいの金額が、ひとつ目安なのでしょう。
第2にそれでも、何度か来る必要を感じます。普通のサラリーマンの感覚からすれば、20万USDのお金を預けて、年に一度も彼の地を訪問しないというのは不安でないでしょうか。政治的に安定していて、(仕事で)毎年行くようなところでないと、安心できないと思います。
第3に、自分にもしものことがあった場合の対応というのも、ポイントだと思います。P.67にも書いてありますが、共同名義の口座が作れると、私も知りませんでした。こうした口座にしておけば、私が死んだ場合にも、口座はActiveなままで、妻が使うことができます。
第4に、やっぱり、海外送金は面倒というのもありますね。メガバンクに、海外から3000円を送金したら、資金使途の照会がありました。マネロン対策なのかもしれませんが、こんな小額の照会を人力でやったら、コストがあうはずがありません。逆に、前述のように、海外の金融機関が最低預入金額を引き上げて、そんな金額は預けられないとなったら、その金額を送金しなおさなければなりません。これも、ネットでポチっとはいきません。
第5に、努力が必要ということ。私はシンガポール5年目ですが、意外に、金融機関から投資の勧誘を受けません。預けている金額が小さすぎるのかもしれませんが、日本の方が、いろんな金融商品を勧めていた印象です。本書に書いてあるとおり、魅力的な商品はあるのですが、自分で英語の資料を読み込み、リスクを取っていかなければならないのだと思います。
では。