【本】佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?

佐藤優さん、神は本当に存在するのですか? 宗教と科学のガチンコ対談

佐藤優 竹内 久美子 文藝春秋 2016/3

神学者と科学者の対談集。ドーキンスの『神は妄想である』を中心に様々な課題について議論をしています。

 第1章は、神の存在について。タブーの根源になる性にいて、動物行動学からは。

竹内:動物界は哀れなオスだらけです。人間の場合、一夫一婦制だったから、取りあえず「あんたの子産んであげる」と言ってくれる女を一人確保すれば、繁殖はできる、という大変恵まれた状況にあります。p.28

佐藤:性の観点からすると、宗教には2通りあるんです。普通の人が守れるような倫理規範・性規範を持つ宗教と、絶対に守れないような性規範の宗教と。(中略)キリスト教は後者です。絶対に守れないからこそ、すべての人が罪人となる。p.29

キリスト教がこうなったのは、当時の女性の地位が低く、布教を広める手段として姦通罪を設けたとしています。

一方、ドーキンスの扱っている問題は、200年前に片付いたものとしています。合理主義、啓蒙主義の行き詰まりを第一次世界大戦としています。

佐藤:第一次世界大戦の直前って、どの国も戦争をしたいとは思わなかったし、科学技術に関しても人類の幸せにつなげられるはずだと思っていた。(中略)そこに起きたんが第一次世界大戦で、結果、合理主義も啓蒙主義も大きな疑念の下にさらされてしまった。p.33

第2章は、聖書について。
 基本的な考え方は、

佐藤:キリスト教はいい加減な宗教だし、聖書は矛盾がある。だから二千年以上、時代の変化に耐えてきたんです。

ですが、本章では、その寄り道が面白かったです。

佐藤:都市ができると階級という支店が入ってくるんですね。圧倒的多数の人間がどんどんどんどん苦しくなるが、収奪する支配層は楽になっていく。p.83

竹内:彼ら(ヤノマミ族)は世界一好戦的な部族と言われているぐらいで、しょっちゅう戦争をしていた。大人の男の3人に1人は戦いで死に、マフィアのメンバーなみの死亡率です。何のために戦うのかと聞くと「決まっているじゃないか、女のためだよ」と言うんです。p.85

動物社会の序列はメスをめぐる序列であり、オスの序列は集団を外敵から守る(ノブリスオブリージュ)という話があった後、

佐藤:動物では、支配と引きかえに支配する側には重い役割が課されているのに、人間の国家の場合には著しく非対称なんです。戦争するとき、非対称ーつまり国民に何の見返りもないと士気にひびくので、戦争に勝てないですよね。だから戦時だけは分配率が平等なんです。反対に、平和なきかんが長くなると格差がどんどん広がる。p96

現在、エリートが信任を失っているのは、平和の代償なのかと考えてしまう下り。

第4章は、浮気のメカニズム。

女性の浮気は、子供3人目(30代~40代)の話に続き、いい男の基準はp.162。

竹内:社会的地位が高いとか、収入が多いということは関係ありません。(中略)免疫力が高いということです。
 (中略) 免疫力の手がかりは、ルックスがい、声がいい、スポーツができる、音楽の才能がある・・・・ 女が「キャー!」と言うようなもの。

と、下世話なネタも秀逸でした。

では。