プーチンの野望 佐藤優 潮新書 2022
ウクライナ戦争を理解するための良書。著者の2005年からのプーチン論を再編集し、第6章に、ウクライナ情勢を加筆したものです。ウクライナ戦争は、20年単位の歴史の中で、理解すべきものなのだと思います。
「ロシアは日本にとって現実的な脅威になった」以上、経営者は情勢を読む必要があると思います。
プーチン大統領については、こちらを参照。
やはり、情報機関出身者がどのような考え方をするのか理解する必要があると思います。
冷徹な情報分析と苛烈な反応は、日本人の想像を超えます。
プーチン氏も、中堅官僚から出世してきたわけで、対人関係の巧みさなしでは、今の地位を得られませんでした。
節目で論文を発表するというのも、日本の指導者にはない統治方法。
https://globe.asahi.com/article/14405289
こういう文章を読み込む必要があるのでしょう。
屁理屈ではあるものの、論理的に国益を主張するというのも、ロシア人の特徴ですね。
第6章で、この5ヶ月の動きを分析しています。まずは、ウクライナ侵攻の目的。2/21の安全保障会議でのナルイシキン長官とのやりとり。
両「人民共和国」を承認すれば、その後、両国がロシアに集団的自衛権の行使を求めてくることになるのがわかっていた。ロシアはそれに応え、ウクライナとの全面戦争に突入する。戦争でロシアが勝利するのは確実だ。だがその後、ロシアと欧米や日本との関係が決定的に悪化する。
p.209
この時点でも、正確にウクライナ戦争の結果を予想していたにもかかわらず、戦争に突入していきました。
ウクライナの理解も欠かせません。ソ連崩壊後、ロシアは国力を回復させたのに、ウクライナは欧州最貧国のまま。汚職も蔓延していました。p.216 こうした政権を変えるために立候補したゼレンスキー大統領でしたが、タックスヘイブンに資産を隠したことがバレると支持率が急落。ナショナリズムに訴えた支持率回復を目指します。ドネツク、ルハンスク、クリミアからロシアの影響を排除しようとします。
ウクライナが自爆型ドローンを使用したことが明らかになると、ヨーロッパ諸国が非難声明を出した。
p218
エマニュエル・トッドは、家族類型の違いを指摘します。ロシアが共同体家族なのに対し、ウクライナは核家族。民主主義は強い国家なしには機能しないのに、ウクライナには強い国家ができませんでした。p.220
まずは、停戦ですが、その後の地域安定には、長い時間がかかることがわかります。ロシアと国境を接する日本も、こうした理解は不可欠だと思いました。