池上彰 佐藤優 文春新書 2014/11
内容が、日本の集団的自衛権、イスラム国、エボラ出血熱、ウクライナ、スコットランド、北朝鮮、尖閣など多岐にわたっており、題名を超える対談になっています。むしろ、海外で働いていると、こうした日本語による事象解説がありがたいと感じます。
情報収集のノウハウは、第8章で触れているだけです。しかし、興味深い指摘が。
佐藤 インターネットでとくに重要なのは、マニアックなものよりも、むしろ公式筋のウェブサイト、ホームページです。
池上 あるいは、新聞で言えば、国際面のベタ記事みたいなものですね。 p.228
何かを分析するときは、信用できそうだと思う人の書いたものを読んで基本的にその上に乗っかること。その上で、「これは違う」と思ったら乗っかる先を変える。
(中略)私なら日本語文献で乗っかれる人は、10人もいない。p.230
【購読紙】
佐藤
- 紙媒体
- NYT、朝日、東京新聞、琉球新報、沖縄タイムス、イズベスチア、赤い星
- ネット
- 産経、日経、CNN、ネナラ
池上
- 紙媒体(毎日20分)
- 朝日、毎日、讀賣、日経、産経エクスプレス、産経、東京
- 朝日小学生新聞、毎日小学生新聞、中国新聞
- ネット
- WSJ
それ以外の章は、時事ネタの議論です。基本的にラジオ等で話ている内容の延長線上にあります。
国際情勢の変化を見るときには、金持ちの動きを見るんだ。最近になって格差が広がってきたというけれど、そうじゃない。昔から甚句の5パーセントの人間に富は偏在していた。東西冷戦の間は、共産主義に対抗するために、その5パーセントの人間が国家による富の再分配に賛成していたけれども、冷戦後は、もはやそういうことに関心を持たなくなった。p.77
ただし、世の中には旧来型の戦争観をもっている国がある。戦争の勝者には歩留まりはいろいろだけれども、戦利品を獲る権利がある。そう思っているのが、ロシアであり中国であり、イランだ。ウクライナもそうだ。p.79
第4章は、中東分析なのですが、イスラム教宗派の解説は、秀逸でした。シンガポールに住むとイギリス統治について唸ることが多いのですが、本書で触れられているのは例えばこちら。
イギリスは、植民地支配するときに近代的な裁判所や行政機関を作ったりシないのです。部族どうしが殺し合いをするときは、イギリスの警察署に事前に計画を提出しろ、そして殺してきたあとは、どれだけ戦果があったか報告しろ、それだけやっていれば構わないという。p.138
第7章のアメリカの分析では、エマニュエルトッドが引用されています。
極論すると、民主主義が成立する国は限られていて、それは、相続が兄弟間で平等な国だけである。p.213
ファーガソン事件の背景が理解できます。
最後に、新帝国主義について触れています。その特徴は2点。
一つは、帝国主義の特徴は、全面戦争をすることでしたが、そうせずに局地戦にとどめている。(中略)
もう一つは、植民地を獲得しようとしないこと。p. 242
結局、地球が小さくなり過ぎたのかもしれませんね。
では。