空飛ぶタイヤ
池井戸潤 実業之日本社文庫 2016/1
三菱自動車のリコール隠し事件(2000年と2002年)を題材にした企業小説。
読後に初出を思わず確かめてしまう。2005年の月刊 novel 。それから10年。三菱自動車は、日産と提携しました。
WOW WOWでドラマ化されました。
https://www.youtube.com/watch?v=jtr9xegk18o
私の興味は、なぜ、今年、その『続編』が出てしまったのかということ。リコール隠しではなく、燃費不正問題でしたが、原因は同じかと。直系家族な組織が、50年以上運営されると、組織硬直化の弊害が出てきますね。陸軍と比較した年表は、右のとおり。
- 組織に出てくるのは、男性ばかり
- 流れに乗っている時には、遺憾なく力を発揮する。(日露戦争、パリダカ優勝)無駄な議論をする必要がないので、集中力が素晴らしい。
- しかし、一旦、時流から外れると、自らを軌道修正する仕組みが弱い。陸軍であれば、米英との衝突はさけなければならなかった。三菱であれば、世界市場を取りに行くには、自前主義では限界があった。しかし、なぜか両方ともドイツを頼って失敗している
- 短期志向
長期にわたるリコールの影響よりも、短期的な利益を優先してしまった。 - 戦略オプションが狭い
事故が発生した場合、「リコールになった場合」を含めて様々なオプションを検討した気配がない。「整備不良」で解決するということが組織に刷り込まれている。 - 属人的な組織運営
不祥事は、後任に引き継がれていて、そのまま続けられる。 - 動機の評価
リコールで多大な損失を招いたという結果よりも、組織を守ろうとしたという動機を尊重してしまう。 - 空気の支配
社内規程に沿えば、事実を公表せざる得ない(はずな)のに、空気は隠す方向へ。 - コミュニケーション
なぜか、同期とのコミュニケーションは抜群だが、組織をまたいだものは。。。
自分もいつ、同じことになるかもしれないと自戒いたしました。