野口 悠紀雄 日本経済新聞社 2017/10
野口教授の金融政策批判。異次元緩和は、日本経済を改善せず、国債市場を歪めただけと総括。印象的なのは、理路整然と、こうした総括ができるということでした。かつての『入門マクロ経済』を淡々と読み進めているかのようでした。
なぜ、こういう議論が、新聞を通して、私のような経済学部卒に届かないのか。不思議だったりします。冒頭
いま日本経済にとっての最大の課題は、金融緩和政策からの脱却をいかにして実現するかだ。p.3
長期国債の4割を日銀が保有する現状を憂いて、
金利は、本来は、経済の体温とも言える重要な経済指標だ。現在の日本経済の状況は、体温計が壊れてしまったので、体調がどうなっているのか把握ができなくなった患者のようなものだ。p.3
第5章では、トランプ政権の減税の影響について論じています。レーガノミクスとの比較。p.162
レーガン政権は、1981年6月に成立した「81年経済再建税法」によって、5年間で7500億ドルにのぼる大型減税を行った。これによって、財政赤字のGDP比が2.5%から2年間で5.9%に拡大し、長期金利も10%に上昇した。
トランプ政権の経済政策は、次の通り。
1.法人税率:35%→15%
アメリカ連邦法人税収は2013年度で2800億ドル。15年度のアメリカのGDPは18兆ドル。減税額は、GDPの1%程度。
2. Repatriation taxを10%に
3. 最高個人所得税を39.6%から25%に
以上の減税額は10年間で6兆1503億円
4.10年で1兆ドルのインフラ投資
個人所得税の減税幅を縮小することなどにより、不足額は4-5兆ドル。GDPの2.2-2.8%。2012年度の財政赤字は、GDPの4%程度。今回の財政赤字は、GDP比率でレーガン政権時を越すかもしれない。長期金利の行方はいかに。
第7章では、物価水準の財政理論(FTPL)も解説していました。
対策としては、トランプ政権を反面教師とせよとありますが、その日本が、「おまゆう」な状況だと嘆いていました。
では。