【本】しんがり 山一證券 最後の12人

しんがり 山一證券最後の12人

清武 英利 講談社+α文庫 2013/11

山一證券破綻をめぐるノンフィクション。直系家族な企業が突然死したその混乱を丁寧に描いていいました。ドラマにもなっているので、あらすじは、横におきます。トルストイは、

幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。

と言いましたが、

業績のよい企業にはいろいろな理由があるが、下り坂の日本企業には、同じような不幸な形(パターン)がある。

というところでしょうか。

  • 平時には順調でも、危機には極めて弱い
  • 上から下へと「一方通行」の権威主義
  • リスク管理ができず、人災として被害を拡大させる
  • 戦局の「後半戦」に弱い日本人の思考習慣
  • 空気の支配
  • 人的ネットワーク偏重の組織構造

など。しかし、本当のしんがりは、まだ、出てきていないのではないか、というのが読後感でした。

本を読んでわかるのは、事業会社がの債務が、証券会社に移ったということ。事業会社は、上昇相場の時には利益を享受したのに、損が出たら引き取らなかった。証券会社は、事業会社(大企業)の要請を断れなかった。そして破綻した。

その後、証券会社の債務は、銀行に移りました。そして、一部の銀行も破綻します。債務は、日本国政府に移りました。政府はその債務を返済するどころか、増やしています。物語は続いています。

頭のトレーニングとして面白そうなのは、もしも、政府が自主廃業した時に、しんがりはどういう報告書を書くのかということ。山一は、昭和40年不況の教訓を生かせずに、30年で破綻しました。30年経つと教訓を忘れて危機が訪れるとすれば、それは、2030年ごろ。

「国民は悪くありません」と泣くのが首相。自主廃業を勧告するのはIMF(アメリカ?)。組合に相当するのは、財務省以外の官庁。法人営業部が、財務省でしょうか。しんがりは、筋としては会計検査院でしょうけど、財務省以外のキャリア有志がやる予感がしております。公務員が解雇するのは、想像しがたいですが、有事につき、一旦、解雇して再雇用となったら、全国的に公務員が構造不況業種になっているはずで、転職は厳しいかと。

債務が発散した理由を調べるのでしょうが、特金が、医療費と年金。こんな条件が長く続くわけないないとわかっていながら、「選挙で勝てる」ので、継続というところでしょうか。物語は、続いていますね。

では。