橘 玲 幻冬舎 2014/4
パナマ文書の後に、以下のくだりを読むと、本書初版の日付を確認したくなります。
2013年6月、国際交差報道ジャーナリスト連合がシンガポールとBVIの信託会社から入手した10万件以上の陶器情報をインターネットに公開した。ICIJはその後、半年以上にわたって資料の分析を進め、汚職撲滅の戦闘に立つ習近平国家主席のほか、温家宝全首相、李鵬元首相ら中国共産党や中国人民解放軍幹部の親族などがタックスヘイヴンを使って蓄財していることを明らかにした。p.388
本書は、フィクションですので、元ネタとなった事件を追っても仕方ありません。読み終えてわかることは、世界は引き続き「パワー」で動いており、その「集合写真」が撮れるのが、タックスヘイヴンということです。最近、『山口組 分裂抗争の全内幕』、『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』、『大世界史』などを読みました。相変わらず、世界を支配するパワーを実感したわけですが、政治家、官僚、軍人、暴力団、芸能人、格闘家が一緒にお食事するわけではありません。ところが、タックス・ヘイブンというフィルターを通して、こうした人達が持つパワーが可視化される。パナマ文書が示したのは、そうした21世紀の現実でした。
本書では、そうしたパワーが可視化されるのは、事件を通してであることがわかります。近代国家における税が、以下に強力であるかがわかります。一方、それを逃れようとするパワーも凄まじいことが伝わってきます。
本書は舞台としてシンガポールが選ばれ、華僑社会を中心に話が進んでいきます。そのうち、この手の小説に南アジアが入ってきて、登場人物にインド人名が入ってくることでしょう。本書を読み終えて、アジアの現実とアメリカ大統領選挙がつながって見えました。
では。