【本】アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略

アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略

Alibaba’s World
How a Remarkable Chinese Company Is Changing the Face of Glbal Business Porter
by Poter Erisman. ポーター・エリスマン 新潮社 2015/10

Alibabaの元副社長が語る、同社成長の軌跡。同社の規模については、こちら。

現在、アリババの登録会員数は3億人だ。取引額は中国の電子取引全体の約80%を占める。中郷国内における物品の発送の半分以上は、アリババのウェブサイトでの取引から生じている。p.14

本書では、マンションの一室で産声を上げた同社が、様々な困難を乗り越えながら、IPOを実現するまでが描けれています。

創業時(99年)の空気を感じさせてくれるのは、こちら。

数年前であれば、大学を卒業しても、ほとんど自分で自分の道を選ぶことはできず、役所の仕事に就いていたはずだ。(中略) 自分は外国人という理由で、現地の同僚たちの50倍の給料をもらっている。p.48

私が始めて中国を訪れた1990年。その外国人は、現地通貨を使うことすら許されていなかった。そこから10年で、こうしたIT企業が出てきたとうことは、中国の変化を感じるエピソード。

イーベイや、ヤフーをめぐるインサイド・ストーリーも面白かったが、印象に残るのは、馬社長が失敗した時の挽回方法。シリコンバレーに開設した事務所を縮小するときのスピーチ。p.67

わたしはみなさんやみなさんのご家族に、ほんとうに申し訳なく思っています。こういう事態になったのは、すべてわたしの責任です。心から謝ります。いつかまた、経営の健全さが取り戻され、事業をふたたび拡大できるときが来たら、ふたたび皆さんにアリババに加わってもらいたいと思っています。

経営者のリーダーシップの裏番組として、経営立て直しに取り組んだCOO サヴィオ氏の取り組みも、印象的。GE出身者らしく、論理的な社内改革。

  1. 組織改革:大半の外国人を解雇
    1. 財務状況をまず改善
  2. 事業所縮小
    1. 中国に撤退(競争力の源泉は、コスト)
  3. ミッション・ビジョンの共有
  4. 人事制度改革
    1. 昇進制度(管理職と専門職)
    2. 評価制度(多面的に)
    3. 2段ベッドを撤去(健康で働ける環境整備)

面白いのは、アメリカ人の著者ですら、サヴィオ氏の改革に疑問を持っていたこと。

中国企業の方が、アメリカ企業に近いなと感じたのは、著者がドットコムバブル崩壊後、アリババを離れる下り(p.88) アリババは、著者にストック・オプションを渡し、著者は後に同社に戻ります。

数年もしないうちに、似たような本がまた出てくることでしょう。インドから。

では。