【本】大国の掟

大国の掟

佐藤 優 NHK出版新書 2016/11

佐藤さんの世界情勢分析。英米、ドイツ、ロシア、中東、中国の地域ごとの行動原理をコンパクトにまとめています。金正男氏が暗殺され、北朝鮮情勢が動いていますが、5地域の動向を頭に入れておくことは、重要だと思いました。

アメリカの覇権が弱まったことで、世界は、新・帝国主義に突入しました。

現代の「新・帝国主義」は、コストのかかる植民地をもたず、全面戦争を避けようとするという点で、かつてとは異なるのです。p.35

アメリカの分断については、エマニュエル・トッドの家族類型を引用した上で、次のように考察しています。

そもそもアメリカは、人間の間には差異があることを前提とする非平等社会でした。それまで白人同士の間で差異を見出していたのが、新大陸でもっとも大きな差異をもつ人種と出会ったことで「白人とそれ以外」というより大きな対立軸が生まれた。p.40

EUの分析では、海洋国家と大陸国家の概念を説明しています。

ランドパワーとは、ドイツやフランス、ロシアなどで、大陸にあって複数の国と国境を接している国家です。その戦力の中心は陸軍が中心になります。これに対し、シーパワーは文字通り海に囲まれた島国で、イギリス、日本、そしてアメリカがこれにあたり、主力は海軍です。p.51

ギリシャ問題を考える際に、同国の近代史を学ぶべきと書いています。古代ギリシャ滅亡以来、「ギリシャ」という国がなかったにもかかわらず、イギリスとロシアの支援を得て、1821年にギリシャ独立戦争が起こります。p.82

第3章は、ロシア。

ロシアは国境を「線」ではなく「面」で捉えます。(中略)

これは平原の大陸国家であり、「タタールのくびき」に苦しめられた長い歴史的な経緯からロシア人に刷り込まれている国境観です。 p.117

中国の海洋進出については、それが進展しない理由を3つ挙げています。p.184 海軍の実力不足、海洋戦略の未熟さ、新疆ウイグル自治区問題。

朝鮮半島については、カプランの引用。

中国は、朝鮮半島のどの部分も将来的に併合する意図はないが、半島の主権国家の存在に今後も苛立ち続けるだろう。p.200

地政学の知識は、これから重要になりそうです。

では。