小川和久 文春新書 1005 2014/12
軍事アナリストによる集団的自衛権をめぐる論点整理。安保法案の議論は、最後まで、「国民の理解が得られない」ままでしたが、本書に記載されている基本的なことについて、メディアが理解して、伝える努力が大切だったと思いました。
集団的自衛権とは、
A国と密接な関係にあるB国が、第3国であるC国から攻撃されたとき、A国自身は武力攻撃を受けていない場合でも、B国への攻撃をA国に対する攻撃とみなしてC国に反撃することができる権利。p.24
と定義しています。第3章には、「集団安全保障」との混同を戒めています。
集団的自衛権を考えるうえで重要なポイントは、以下の2点。p.9
第1は、「そもそも国家の平和と安全をどう確保するのか」を考えること。
第2に、日本の防衛力の現状を直視すること。
前者の方法としては、現実的に以下の2つの手法がありえます。p.10
1 どの国とも組まず、自前の軍事力で平和と安全を実現する武装中立
2 アメリカのような国と同名関係を結び、協力して平和と安全を手にする道
前者なら22兆円、後者なら5兆円の費用がかかります。
いま、集団的自衛権が議論されているのは、極東情勢の変化によるものです。各国の陸上兵力は以下のとおり。
中国 160万人
北朝鮮 102万人
韓国 52万人
日本 24万人
台湾 20万人
地域で圧倒的な地上兵力を持っている中国が、経済力をつけてきたことが背景にあります。
法律論では、
日本国憲法、国連憲章、日米安全保障条約との整合性から、集団的自衛権を検討する必要がある p.70
としています。
海外に住む身として参考になったのが、非戦闘員退避活動(Non-combatant Evacuation Operation) p.118。海外居住の日本人が増えているので、NEOを実行するために必要な措置を整備する必要も実感できました。
他にも、現場の視点から、集団的自衛権をめぐる議論を整理しており、非常に勉強になりました。