人事マネジメントの重要著作をまとめたもの。人事部に配属になった人にオススメです。
こうして並べられると、日本の人事マネジメントが、James C. Abegglenの『日本の経営』(1958年)に対する注釈からなっているように見えます。同書については、原題が”The Japanese factory: Aspects of its social organization” であり、当時としては少数であった大企業・メーカーを分析したものであることを指摘した上で、その後、時代の変遷によって、日本の労使間で適切な労働関係を模索してきたのがわかりました。
中心にあるのが、やはり、労働者を中心とした会社作り。日本経営者団体連盟の『能力主義管理』(1969)、楠田丘『職能資格制度』(1974)、小池和男の『日本の熟練』(1981)によって、職能給の普及や、教育・訓練の発達が理解できます。それを伊丹敬之は、『人本主義』(1987)と呼びました。
90年代以降は、日本経済の変化によって、人事マネジメントも変わっていきます。学者として、早期に指摘したのが、島田晴雄 『日本の雇用』(1994)でした。新たな時代のビジョンは、野中郁次郎・竹内弘高『知的創造企業』(1996)に示されていましたが、多くの企業は対応できませんでしたね…。
コンサルタントとして、体系化したのが、高橋俊介『人材マネジメント論』(1998)。政府の政策まで含めた日本の変革を訴えたのが、八代尚宏『雇用改革の時代』(1999)といったところでしょうか。
00年代に入ると、他国と比較した上で、よりラジカルな方向性を訴えるようになりました。清家篤『定年破壊』(2000)、濱口桂一郎『新しい労働者社会』(2009)
10年代は、3.11を受けて、小さな企業も海外に出て行かざるを得ない状況になっています。小さな企業が現地でどのような人事マネジメントをするのか、まとめた本が出てくる予感がしています。著者は日本人でないかもしれませんが。