日本人とユダヤ人 山本七平 角川書店 1971
日本人論の古典。40年の月日を経ても色あせていません。
冒頭、ホテル住まいのユダヤ人の例を引き。安全へコストの感覚差を指摘。4年以内に70%の確率で直下型地震が来るといわれて、そのまま住み続けるべきか考えてしまいました。
日本の安全性では、未曽有の国難を経験していないことを指摘しています。
日本最大の内乱といえば関ヶ原の戦いだが、この決戦が何と半日で終わっている。
p.66
農耕民族という特徴も変わりませんね。
日本人の大きな特徴の一つは牧畜生活を全くしなかったこと、遊牧民と全然接触しなかったこと。(中略)その一例としてあげられるのが奴隷制度と宦官がなかったことであろう。
p.43
この差は、処女降誕伝説にも現れています。
ある「ものずき」が調べたところによると、ユーラシア大陸の西から東まで処女降誕で生まれた人間は1856人もいるそうである。(中略)ところが、処女から生まれた人間が絶対に存在しなかった民族が2つある。一つはユダヤ人であり、もう一つは日本人である。
p.187
牧畜文化では生殖=利殖であり、日常の世界。一方、農耕文化では、性は利殖とは結びつかず、情緒の対象。処女降誕を考える必要がありません。
気候についてはこちら。
日本の稲作は気候の点で少しく無理があるから、否応なし、待ったなしに緻密な計画のもとに手ぎわよくやらねばならない。3月に苗代、梅雨期に田植え、台風前の結実、秋の快晴にとり入れといったスケジュールは崩せない。
p.54
日本人は全員一致して同一行動がとれるように、千数百年にわたって訓練されている。従って、独裁者は必要でない。(中略)また日本の暗殺の系譜もこれを示している。独裁者から民衆を解放するために行われた暗殺はない。
ミカの弁証法をめぐる議論も重たいですね。「一人の反対者もいない全員一致の議決は無効」というものですが、日本では、
議決は100%は人を拘束せず。
日本には法外の法、言外の言があるということです。そう、自分の党で決めたことすら、党員を拘束しません(笑)。
日本教の話も、興味深いですね。
日本教という宗教は厳として存在する。これは世界で最も強固な宗教である。というのは、その信徒自身すら自覚しえぬまでに完全に浸透しきっているからである。
p.127
昨年の震災は、その信仰が確認されました。
日本の評論家は、プールサイドにいて、人の泳ぎ方を実に巧みに批評するが、カナヅチで絶対にプールに入ることはない「プールサイダー」であるとの指摘も重たいですね。政治家までがプールサイダーにように見えます。求められるのは、大声をあげるほど無視され、沈黙のうちに進んでいく日本人の政治的天才なのでしょうか。
では。