The Next Decade by George Friedman 早川書房 2011/6
情報機関STRATFORのCEOによる『100年予測』の続編。時間軸、軍事的な視点という意味で、私にかけているものだったので参考になりました。アメリカの世界観がわかり、世界を俯瞰でき、日本を客観視することができました。
主な予測は、次のようなところです。
・世界的に経済ナショナリズムが高まる
・世界帝国になったアメリカは、イスラエルから距離を置き、イランと和解する
・長期的にイランとイスラエルの対抗勢力になるのはトルコ
・ドイツはEUに見切りをつけ、ロシアに接近する
・日本は長期的には長期的には軍事力を増強する、短期的には国内の経済、人口問題にとらわれる。
・中国は国内問題に足をとられ、弱体化しはじめる
・マイクロチップやインターネットに相当する次の画期的新技術があらわれるのは、10年以上先になる
予測の精度を置いても、こうした事態が起こった時に、経営者はどうするかを考えるトレーニングになると思いました。
たとえば、電気自動車は普及するでしょうが、それはエネルギーを動力に変えるのが街中から発電所に移動するだけで、資源価格に引き続き振り回されるのだと理解できます。
印象に残ったのは、以下の点です。
これまでに起きた2つの世界的なできごとが、次の10年の枠組みをつくるだろう。すなわち、ブッシュ大統領の9.11テロ事件への対応と、2008年の金融恐慌である。p.74
EUの亀裂をナショナリズムの発露と指摘しているのもハっとしました。
この2つの事件でアメリカの運営の困難さがましました。その命運を大統領み見出しています。
大統領職は、制度であり個人でもあるという点で、他に例を見ない機構である。
大統領は権力を持っているだけでなく、指導力があるというのは、重い言葉ですね。たしかに、最高裁判所に指導力はないですね。
日本人にとって印象的なのは、「日本語版刊行によせて」地震型社会、日本でしょうか。
アメリカのような「氷河型の社会」もある。そこでは変化が絶えず、社会、政治体制がつねに少しずつ変わっている。氷河が動くように、ものごとは不断に進展しているが、一つのできごとがいきなり社会を一変させることはない。
これに対して日本は、氷河型社会ではなく、「地震型社会」といえる。さまざまなできごとが起きても、長い間にわたってほとんど変化が見られない。その間、国内体制や対外関係では、水面下で圧力が高まりゆく。そして突如として体制が 瓦解し、大変革が起きるのだ。p.5
著者は、アラブの春と原発事故によって資源のない国のセーフティネットがなくなったと指摘しています。
私は、日本のリーダー不在の文化的原因だと受け取りました。氷河型の国では、リーダーの言葉によってわずかながらでも氷河が動く。リーダーはその動きを早めようと弁舌を磨き、組織に働きかける。国民は、こうした動きが最終的に国を変えると理解しているので、リーダーの声に耳を傾け、自らも運動に参加していく。
地震型では、どうでしょうか。戦前に民主主義を唱えたリーダーは、戦後、正しく国民を導いていたのがわかります。しかし、戦前にはほとんど変化が見られません。水面下で圧力は高まっていたかもしれまえんが、リーダーに手応えはなく、むしろ、悲惨な目にあいます。マッカーサーがやってきて、トップが変わると、突然、民主主義バンザイとなる。
日本でアメリカのようなリーダーを育てるのは、いろいろハードルがありそうです。