【本】日本経済の底力

 戸堂 康之  中央公論新社 2011/8

週刊ダイヤモンド2011年のベスト経済書第4位。昨年、「途上国化する日本」 を紹介しましたが、大震災後の日本経済への処方箋を提示しています。
 日本経済に対する危機感は、前著と同様。日本経済が停滞している原因を「制度」まで遡って検討しており、制度が「粘着的」であると述べています。

その方策として、グローバル化と産業集積(特区)を主張しています。

グローバル化できていない企業の理由は2つ。ひとつは情報不足。もうひとつはリスク回避。p.55 市場経済に任せていては、グローバル化は進まないとし、政府の介入が必要としている。p.56- 第4章では、TPPについて詳細な検討があります。

産業集積が経済成長を牽引すること、しかし、残念ながら日本の地方には産業集積が十分に育っていないことをみてきた。だから東北をはじめとする日本の各地に高度な技術を格とした産業集積を創出することが、日本復興を超えた飛躍的成長には不可欠だが、それには政府による政策介入が必要である。p.132

というわけで、特区の具体策が続きます。

この制度転換「さえ」できれば本来の底力を発揮できるかはさておき、本書で指摘されている制度転換は必要だと思います。しかし、私の関心は、さらに深層にある文化に向かいました。地方の企業がグローバル化できない文化的な問題はないのか。自分が考えなければならない課題がいくつか沸いてきます。

ソニーの田宮さんは、ファックスもない時代に単身南米に送り出されました。スペイン語を覚えるところはら始めて、南米中に販売網を作って帰って来ました。YouTubeとGoogle Streetviewのある時代に、「情報がない」とは之いかに?

高岡市は400年にわたって銅器産業が集積していますが、経済の低迷にあえいでいます。集積したものを変えるべきなのか。その方法は?

富山県は戦前から満州やウラジオストックとの交流を続けてきています(グローバル化)。結合→経済成長が起こらない理由は?

DiSC分析風にいえば、決断力がある人や(D)、自由な発想ができる人(I)は、東京にでも、NYにでもすぐに行く。地方に残る人はそうでない人(SC)なのだから、彼らに他国との結びつきや新たな集積を求めることに矛盾はないのか。

など。とても勉強になりました。