【本】10万年の世界経済史

10万年の世界経済史
A Farewell to Alms by Gregory Clark 日経BP社 2009/4

「10万年間の世界経済史」が説明されているわけではありません。技術進歩が人口の増加によって打ち消される「マルサスの罠」(Malthusian trap)。産業革命の後になぜ、「マルサスの罠」から脱出できたのかを考えます。

最初に驚くのが、数々の歴史的経済データ。産業革命前までは、一握りのエリートがぜいたくをしていたとしても、庶民の生活水準は旧石器時代や新石器時代を上回るものではなかったと、さまざまなデータから論じています。
たとえば、ヨーロッパにおける既婚女性の総出生数は、1790年以前で、8人程度(p.128)。一方、女性1人あたりの存命の子供の数は、2人程度でした。ほとんどの庶民は、こうした厳しい経済状況下にあり、生産性の改善は、人口増で相殺されていました。
それが、1800年以降、産業革命が起こった国は、ひとりあたり所得は急速に伸び、「マルサスの罠」を脱却して行ったのに対し、そうでない国は、いまだにその罠にとらわれたままになっている。
こうした長いスパンで、経済問題を捉えるのも、よいことだと思いました。

では。

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【参考】
大和総研 原田 泰さんの書評