危機は循環する―デフレとリフレ
白川浩道 NTT出版 2011/7
証券エコノミストの日本経済分析。東日本大震災の影響は、「日本リスク」が国内外に認識されたこと。「日本離れ」は単に外国人の退避にとどまらず、日本企業の生産拠点の海外移転を引き起こしていると指摘しています。
原発の事故は、日本がもはや豊かではなく、技術力にも衰えがみえていることを確認したと認識すべきだ。(中略)バブル崩壊後の経済低成長が、広く生産・資本設備の老朽化と技術の陳腐化を招いてきた、ということに他ならない。p.4
震災の影響は、直接被害もさることながら、名目トレンド成長率を低下させた恐れがあるとしています。日本の財政状況が改善する目安は、名目トレンド成長率と長期金利にあり、前者の低下は、財政破綻のリスクを高めます。
対策として、金融緩和には厳しい味方をしています。円安が外需依存度を無用に高め、経済危機にともなくデフレショックを増大させてしまうからです。(p.18あたり)
代わりに、財政政策:消費税引き上げではなく、貯蓄税導入をを主張しています。
現在、ウォール・ストリートで起こっていることと重ね合わせると興味深い主張であります。
本論とは外れますが、あとがきのエコノミスト論も興味深かったです。官庁エコノミスト、学者エコノミスト、証券会社エコノミストの3者の特徴を指摘した上で、協力する重要性を説いています。日銀出身者らしい下記のコメントがありました。
私は証券会社エコノミストになって自由市場型資本主義に大きな疑問を抱くようになった。実態経済ファンダメンタルズを移すという市場の本来の機能はまだ生きているものの、実態経済からかけ離れて暴走を起こす、という副作用が目立ち始めている。市場に実体経済が振り回され、しかも実体経済が沈むたびに安易な金融緩和が実施されることで市場の暴走が繰り返されている。p.255
では。