小黒 一正 日本経済新聞出版社 2010/8
一橋大学准教授による、日本の財政解説。タイトルはともかくとして、日本の世代間格差を実証データで検証しています。
日本の財政が急速に悪化している原因は、社会保障給付の増加。これは高齢化によるものです。細かなデータは、ほかのブログ参照(たとえば、こちら)
日本国の貸借対照表を作成すると、280兆円の債務超過。社会保障(年金・医療・介護)「暗黙の債務」1150兆円を加えると、債務超過額は約1430兆円になるとしています。こうした現状を踏まえ、社会保障を一般財政から切り離すことを提言しています。
印象に残ったのは、以下の点です。
- 財政再建の時期
景気回復まで財政再建を待てば良いというものではない。好況期には金利が上昇する。p.29- 増税のやり方
問題は、①段階的に増税か、あるいは、②一度に増税か、という議論である。結論を先取りすると、社会厚生ロス最小化の観点では、②の方が望ましい。p.32 (負担の平準化、資本課税ゼロの定理)- 倍加年数(高齢化率が倍になる年数)
世界は32年、フランス115年、アメリカ71年、日本24年、韓国18年、シンガポール19年、ブラジル21年。- 内国債であれば、国民の借金であると同時に資産
現実には、各世代はそれほど利他的でなく、世代交代や家計の異質性もあるから、成り立たない。p.130
第5章は、世代間格差の解消法に当てられています。この件も議論は尽くされていますね。決断の時かと。