【本】強者のしくみ ☆☆☆☆

強者のしくみ 論理的思考と全体最適を徹底する会社
強者のしくみ
磯部 洋 ダイヤモンド社 05/3

セブンイレブンとしまむらをベンチマーキングして、強い企業に共通する「しくみ」は何なのかを分析した好著です。先日の清涼飲料値下げをきっかけに、この本を読んでみました。


論旨は、題名どおり、強い会社というのは、人に頼るのではなく、「しくみ」があるのだということ。やはり、経営を極めていくと、こういうことになるんでしょうか。先日ご紹介した、「中小企業経営の極意」と通じるところがあります。
本書で説明される「しくみ」は、他の経営本でも書かれているものです。しかし、第一級のコンサルタントが書いているだけあって、2社の実例は、実に説得力があります。セブンイレブンについて書いた本は多々ありますが、この本の分析は、群を抜いているのではないでしょうか。
 両社にあって、ほかの日本企業にないものは、しくみ、成功方程式、コントロール。しまむらの藤原社長は、

トラブルがあった場合まずシステムを疑う。人は疑わない。システムを完全にすることを考える

のだそうです。似たようなことをいう経営者は多いのですが、実際にできる人は、ごく少数でしょうね。
 ほかに気になったコメントは、以下のとおりです。

「変化の先取りなどということはできるものではない」
「商売にとって経験は邪魔である」
「どこまで徹底してお客の立場に立ってモノが考えられるか、(中略)それが競争だ」
「業績は体質の結果である」
「差別化の追及とは(そういった)条件づくり、体制づくりである」

「競合があるから自己差別化が追求できる」
「あらゆる手段の所有は硬直化を招く」

「小売業は技術を極めれば家業から産業に変わる」
「トラブルがあった場合、まずシステムを疑う。人は疑わない」
「売れる価格が正しい価格。最初につけた価格は仮想の価格」
「しくみを作ってから店を作る」

2社をベンチマークすることに異論はありませんが、「コントロール」については、意見が分かれるかもしれません。著者も「おせっかい」と表現していますが、普通の会社員であれば、やりすぎと感じるでしょうね。日本には、逆にSonyのような会社もありましたし。
また、会社は利益を上げるためにあるというのも正論なのですが、これも、議論が分かれると思います。例として、社長が掃除したり、給料の高い女性社員がお茶を入れる例がありました。コストに合わない活動は見直すべきですが、100%排除すべきかは、企業ごとの判断ではないかと思います。

著者の分析は、日本人論にまで進んでいきます。反面教師として、太平洋戦争の日本軍を分析していて、「昭和史」とあわせて読むと、説得力が増します。私も、アメリカに留学していたときに、どうして、日本人は、「統治機構」を作る力が欠けているのだろうと感じていました。この本は、そのヒントをくれています。ただ、日本人論に割いた部分は短く、理論として納得できるところまでは行っていません。次回作に期待ですね。

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