【本】電通とリクルート

電通とリクルート

山本直人 新潮社 2010/12

博報堂OBの広告論。2社を対比させることで、戦後の広告と社会を分析しています。

 まずは、広告の現実。p.20

 広告ビジネスの現場にいる人は、決してそうは思っていない。なぜなら人々はそう簡単に「踊る」わけではないことを身にしみて知っているからである。

それを踏まえた上で、電通=発散志向 vs. リクルート=収束志向 の広告を読み解いてきます。

 戦後の日本では高度成長期においては広告の「拡声と伝達」機能が消費の拡大に寄与した。その後、70年代から「意味の書換」の模索が始まり、80年代にその機能は最も高まった。p.35

「おいしい生活」など糸井さんが活躍したのが1980年代でした。

「時代なんか、パッと変わる」 (ウィスキー)

「女の記録は、やがて、男を抜くかもしれない」 (伊勢丹)

それが、「コピーからランキングへ」移って行きました。p.91 分衆の時代のネットによる情報革命についてはみなさんご存知の通り。

第5章は CMから「憧れの景色」が消えた。広告業界における自動車の位置づけはこちら。

 広告ビジネスにおいて自動車産業は特別の地位を占めていたといっていい。自動車のキャンペーンの実績が広告代理店の評価を決める。それが世界の標準的な考え方である。p.145

かつて、「あこがれ」を訴求していた自動車が、「お店に行こう」というガイダンスに変質する。それに対しリクルートは、就職以外にも雑誌と次々に打ち出していく。第2章のタイトルどおり、「元栓のうまみ、毛細管の凄み」

このあと、市場はソーシャル化するわけですが、そこは触れていません。今は、分衆でなく、何なんでしょうね。そして、第3のプレイヤーはだれになるのでしょうか。

では。