Stuart L. Hart 英治出版 2008/3
コーネル大学教授による持続的成長論。多国籍企業がBOP市場に取り組むことに、その解決を求めている。
最初に、環境負荷について、ポール・エアリッヒの公式を紹介しています。
I=PxAxT : Impact= Population x Affluence x Technology
Polulationについては、こちら。
私は1952年のベビーブーム世代の一人として、およそ20億人が住む世界の一員になった。それから半世紀も経たないうちに、その人口は60億を超えるまでに膨らんだ。もし私が円熟した老年になるまで生きるとしたら、そのときには80億は優に超えることだろう。たった一人の障害の間に人口が20億から80億に増えるとは、まさに前代未聞だ。
Affluenceについては、こちら。
裕福な8億人が、世界のエネルギーと資源の75%以上を消費し、産業廃棄物、有害は器物、家庭ゴミの山をつくり出している。p.63
その一方で、次のような現実もあります。
安全な飲み水を手に入れることのできない人が、世界中には10億人以上いる。公衆衛生設備が不十分な環境にある人は、さらに24億人に上る。その結果、汚水を原因とする下痢性疾患はおよそ40億件、年間300万人が命を落とし、そのほとんどが5歳未満の貧しい子供たちだ。p.84
出発点は、やはり、南北問題なんですね。発展途上国が、先進国並みの豊かさを実現しようとすれば、こんなImpactが出てしまいます。
1990年代半ば、中国の道路に自動車は100万台も走っていなかった。ところが人口10億超の中国では、30%に満たない普及率で現在のアメリカの自動車市場規模(年間1200~1500万台)に追いついてしまう。そして、最終的な需要は、年間5000万台以上になる可能性がある。p.117
そこで、多国籍企業のTechnologyに期待するわけですが、このあたりは、以前ご紹介した『ネクスト・マーケット 』に同じ論旨です。
ひとつの例として、メキシコ最大のセメント会社、セメックスの例を紹介しています(p.198)。貧困層への売上は、同社の4割にも達するにもかかわらず、十分な調査がなされていませんでした。そこで、調査チームは、半年間貧民街で暮らし、中途半端な工事が行われている真の理由をみつけます。銀行や業者は、貧困者とかかわりたがらないため、行き当たりばったりの設計となり、1部屋を造るのに4年、小さな家を建てるのに13年かかっていました。同社は、貧困層向けの貯蓄会を始めます。
プログラムの参加者は、品質の高い材料と設計、それまでの3分の1の期間、3分の2の費用で家を建てられるようになった。p.200
環境問題が、経済成長とトレードオフとして捕らえられてた時代からすると、持続的成長に流れが移ってきているのは、よくわかりました。ただ、目の前のビジネスで、実際に何ができるのかというと、インドに行くだけでも、まだハードルがありますね。それが次の課題になると思いました。
では。