経済成長とモラル
Benjamin Morton Friedman 東洋経済新報社 2011/5
ハーバード大教授による経済成長論。社会モラルとの関係を分析し、経済成長と社会モラルがお互いにプラスの影響を及ぼすと、楽観的な見方を示しています。(p.6あたり。または)
生活水準が持続的に改善された国々は、開放的で寛容な社会を維持し、民主的な諸制度を拡大・強化しようと努めることが多い。しかし、多くの市民が向上を実感できていない場合は、社会はより硬直的になり、デモクラシーは弱まってしまう。p.309
こういう問題設定は、プロ倫を思い出させます。著者は、ウェーバーが、他の宗教・民俗グループを看過していること、宗教的発展と経済的発展の間には複雑な相互作用があること、経済成長には他の要因も影響したことなどを指摘した上で、根本的な点は変わらないとしています(p.20)。
原本では複数国の例を検証しているそうですが、日本語版はアメリカのデモクラシーを取り上げています。
この間の一世紀と三分の一にわたるアメリカの経済成長は、部分的にはわずか3900万人から2億9400万人へという我が国の人口増加を反映しており、これは自然増と移民の結果である。しかし一人あたりの数字を見てみても、アメリカ人の実質所得は今日のドルに換算して3400ドルあまりからほぼ4万ドルへと10倍以上上昇し、年当たり1.8%の上昇率であった。p.139
アメリカの境遇の平等や、所得の格差是正が、モラルに影響して、成長を実現。成長の確信が開放性、寛容性を高めることを検証。その逆の流れについても検討しています。
停滞が続いた日本や、テロが起こったノルウェーに当てはめて考えると興味ふかいです。
では。