The End of the Free Market
Wo Wins the War Between States and Corporations?
Ian Bremmer 日本経済新聞出版社 2011/5
21世紀になって台頭著しいBRICs経済の分析書。国家資本主義という概念に焦点をあて、どのように対峙していくか考察しています。著者は、Free Marketが消えてなくなると思っているわけではなく、世界経済に複数の経済システムがあり多極(無極)化が進んでいると主張しています。
国家資本主義とは、経済体制は資本主義でありながら、国家が基幹産業をコントロールする経済体制。これまでも国家資本主義の国はありましたが、中国の台頭によって、自由経済陣営は、真剣に対応せざるをえなくなりました。国家資本主義の特徴は、政府主導で輸出を拡大する重商主義であり、目的は政権の安定にあります。それが色濃く現れるのが資源外交。その行動を見ていると、2つの特徴があります。
- 一時的な経済再建・景気刺激策としてではなく長期的・戦略的な政治判断として経済介入を行なう
- 個人に市場的チャンスを与えるのではなく、国益や支配者層の目的にかなうように市場を利用する
おもえば、ちょっと前までは、驚異と思われていたのは多国籍企業でした。p.27には、国家と多国籍企業とGDP(売上高)のデータが紹介されています。2000年では、top 100の中の51が多国籍企業、49が国家でした。(最新データでは、IPSのサイト参照)
http://news.mongabay.com/2005/0718-worlds_largest.html
多国籍企業はますます売上高を伸ばしているにも関わらず、国家資本主義のトップ企業は、政府と連携して、こうした多国籍企業を圧倒しだしています。
日本にも通産省があったではないかという方には、こちら。
日本が指令経済下にあったことは一度もないのである。高い国際競争力を発揮する日本企業はすべて民営であり、通産省はその影響力が頂点に達していた時期でさえも日本経済の主役ではなかった。 p.66
北欧諸国についても、同様の見方をしています。著者の世界経済の見通しは次の通り。
少なくともこれから何年かは、中国の経済と国際的な影響力は拡大し、アメリカの超大国としての優位は引き続き縮小していくだろう。国家資本主義の永続は考えにくいが、あと数十年は存続する可能性が高い。p.222
民間企業には、国家資本主義との正面衝突を避け、ビジネスモデルを進化させていくことを推奨しています。
以下、個人的な感想ですが、これこそ、家族類型のモデルがよく当てはまる分野だと思います。ロシア、インド、中国、中東などは、共同体家族の国です。権威主義的である一方、子供(国民)への平等な分配を意識します。こういう国とのつきあいかたを文化レベルでも考察できると余計な摩擦は減らせると思いました。
では。
【参考】
ダイヤモンドでのインタビュー
http://diamond.jp/articles/-/12781