境真良 講談社現代新書 1938 2008/4
経産省OBによるメディア論。「放送と通信の融合」というわかるようなわからない問題に対して、的確な整理をして、方向性を示しています。
日本の映像産業は相似形のような映画産業とテレビ産業に支配されていて、どちらも映像コンテンツの生産部門よりも流通部門に利益が集中するシステムになっているp.54
映画は配給会社がスクリーンを押さえており、テレビはキー局が全国のネットワークを押さえている。これが、利益の源泉なわけですね。以前、『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』を紹介しました。テレビ業界の5 Force Analysisの図を掲載しましたが、見事に利益があがる仕組みになっています。
広告モデルの進化方法としては、オーソドックスに、販促費の取り込みを推奨しています。
2006年現在、日本経済全体のGDPは509兆円(名目)で、そのうち広告費は6兆円。それに対して、13兆円とも16兆円とも言われている販売促進費・営業費が、この個人情報活用ビジネスの向こうには、存在する。p.155
コンテンツ業界へは、広告付きDVDによる海外進出を示唆しています。テレビ業界については、「次のテレビ」を提示しています。寡占に頼らない流通力として、ハイパーリンク的なメディアミックス。すなわち、視聴者の「発見する快感」を刺激する仕掛けを重層的にプロットすることで、コア・ファンをつかむべきと主張しています(p.166)。こうして新たな流通力を持った次のテレビは、
単にコンテンツのためのメディアにとどまらず、マッチング技術と個人情報ビジネスという2つの面で、広大な情報ビジネスの一部として機能し始める。p.172
のだそうです。こうなってくると、コンテンツ自体が変わり始めます。単純な映像を超え、イベントになったり、街でのFeliCaタッチになるのはそうだろうと思います。しかし、「クリエーターの覇権の終わり」として、User Generated Contentsが紹介されていますが、プロのクリエーターと素人のすみわけは、よくわかりませんでした。先日のプロフェッショナルの流儀で取り上げられた宮崎監督をみていると、むしろ、玄人志向は強まるのではないかと思うのですが、どうでしょう?
では。