与謝野馨 新潮新書 257 2008/4
経済産業大臣による政治論。安倍内閣総辞職時の話など、自身の回顧録と、政治姿勢を訴える内容になっています。財政再建のための消費税容認、中選挙区制復活、官僚を通じた政治など、主張は首尾一環しています。
大衆にこびない姿勢は、評価できますが、やはり「20世紀の政治家」という不満が残ります。政治家は、技術の進歩を真っ先に取り入れて、人々の心に訴えてきたのでは?というところでしょうか。
蒸気機関車ができれば、列車で移動して演説。新聞ができれば、名文を寄稿。ラジオができれば、落ち着いた言葉で語りかける。テレビができれば、颯爽と登場して、短時間でポイントを突く。95~05年の最大の変化は、インターネット&ケータイだと思います。この技術革新によって、やろうと思えば、安価に直接民主主義ができてしまうところまで世の中が変化しているのに、昔ながらの代議員制&間接統治。
企業は、こうしたコミュニケーションの変化にいち早く対応しました。社長がイントラネットで社員に企業の進むべき道を示し、社員からきたメールに直接回答するということは珍しくなくなりました。大企業によっては、従業員が10万人を超えることもあり、選挙区の有権者数に匹敵する社員と話をしています。
ポスト・ネット時代の有権者は、リーダーに直接説得されたいと思っているのではないでしょうか。オバマ氏にはその能力を感じますが、福田さん、与謝野さんには、それが感じられません。
官僚に対する考え方にも、ズレを感じました。公務員は約400万人。与謝野さんの周りにいるような官僚(1万人ほど?)は、もちろん優秀だと思いますが、残りの399万人は、典型的な官僚組織の問題に直面しており、年金などの問題が起こっています。これを解決するには、単純な間接統治ではなく、さまざまなマネジメント手法を駆使して、組織にメスを入れる必要があるのではないでしょうか。
では。