今井 彰 幻冬舎 2010/2
プロジェクトXのプロデューサーによる自伝的小説。メディアに関係していない人が、放送局(報道局)の空気を知るためには、よい本だと思います。
むしろ、MBAの組織論の教材として考えると面白いなと思いました。
管理部門 vs. 現場
どの組織にもある対立ですが、本書では現場の立場で勧善懲悪風に書かれています。管理者側から書けば、全く違った本になるでしょう。人員配置が基準を定められずに決められるのが描かれています。仕事量を計測して、社員が休めるように配置するのではなく、社内の交渉(ボスの力関係)で配置が決まっていきます。
直間比率
官僚組織の特徴が色濃く出てますね。膨張する管理部門。間接比率が7割は異常に感じます。リスクを回避しようとする風土。中間管理職の増大と、人事への固執(派閥)。
直系家族な統治
会長の絶対権力が印象的です。政治部主導というのもよくわかりました。政治部出身の会長が、番組制作に必要な人員がわからないというエピソードがありました。
不思議ですよね。いつもは、そういう非民主的な政府を批判しているマスコミが、そういう統治になっている。北朝鮮を批判しているにもかかわらず、自社の会長がエビジョンイルとか呼ばれてしまう。
キャリア
番組作りが天職であるにもかかわらず、番組を守るためには、出世しなければならない。出世すると今度は膨大な雑務(含む怪文書対応)に謀殺される。こういう単線キャリアしかないんですね。マイケル・ムーア監督は、NHKでよいドキュメンタリを作れるでしょうか…。放送局には、他の組織設計ができる気がするんですが、直系家族の社会だとダメですかね。
では。
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