新聞の時代錯誤―朽ちる第四権力
大塚 将司 東洋経済新報社 2007/3
日経が、大塚さんを訴えましたね。本書は、その元日経記者によるコーポレートガバナンスの本。著者は、三菱-BOT合併をスクープした敏腕記者でしたが、日経子会社で発生した不正経理事件を株主総会で追及して、懲戒解雇されました。
そういう経歴からすると、告発本かと思うのですが、コーポレートガバナンスの本になっています。1940年体制を未だに保持する新聞社のガバナンスを丁寧に見ることによって、現代の企業統治について、いろいろ考えさせてくれます
日本の新聞業界は、”言論の自由”という錦の御旗のもとに戦時下の言論統制時代の経営形態、つまり”1940年体制”を温存している唯一の業界であり、それがコーポレート・ガバナンスと無縁の存在にしている最大の原因なのだ。p.266
たしかに言われてみれば、
英米型の経済システムを推奨する『日経新聞』の紙面には、「日本企業も役員報酬を個別開示している欧米企業に倣うべきだ」という趣旨の記事が掲載される。しかし、日経新聞者の杉田亮毅社長は自社でどうするか問われて「上場企業の大多数が個別開示するようになったら考える」と平然と答えている。p.265
日本を代表するような有名企業で、1年間に社員の逮捕者が5人も出たことがあるだろうか。また、3年間に2回も東京地検特捜部のお世話になったところがあるだろうか。p.81
など、明日からの日経読み方が変わってしまいそうな事実を次々に挙げて、批判しています。
株式譲渡制限が、当初は言論の自由を守るたであっても、時間が経つと、やはり経営陣の牽制がきかなくなる。企業の統治システムというのは、本当に難しいものですね。
では。
【参考】
夕刊フジ 2007/10/12 p.1