資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄 ダイヤモンド社 2007/5
野口先生の最新作。週刊ダイヤモンド等のコラムで見かけたようなネタがありますが、ひとつの本になって、さらに説得力を持つようになっています。
日本の一人当たりGDPは、93年には世界1位でしたが、かつての欧州最貧国アイルランドの4分の3になりました。為替の問題もあるでしょうけど、先生は、その原因が、生産性の低い産業を温存してしまったことにあるとしています。
日本にとって最重要の政策は、産業構造を高度化することである。産業構造を古いタイプの「ものづくり中心」の構造からシフトさせ、「中国にできない高度な経済活動を行えるような構造」に転換させることだ。 それにもかかわらず日本では、「需要不足やデフレが経済停滞の原因」、したがって「金融緩和の継続が必要」、と相も変わらず主張されてきた。そうした考えに基づいて実施された低金利政策は、過大な債務を抱える重厚長大産業を助け、円安政策は輸出産業を助けた。その結果、古い産業構造が温存された。p.45
そして、そのモデルをイギリスに求めます。1990年代の初め頃、イギリスの一人あたりGDPは日本の半分以下でしたが、2005年に日本を上回りました。イギリスは、高度なサービス業とりわけ金融業が、経済をひっぱり、15年連続の景気拡大を達成しました。
外貨準備高に占める通貨ランキングで、ポンドは、日本円を抜いて3位になりました。
ドル 66.3%
ユーロ 24.8%
ポンド 4.0%
日本円 3.4%
そして、p.109では、未来型企業の話が出てきます。未来型企業とは、従業員あたり時価総額が100万ドルを超える企業です。
時価総額ランキング(Yahoo)。
Googleの時価総額(GOOG) 1989億ドル(23兆円)
アメリカで上場している企業の時価総額ランキング
NECが7万ドルですので、グーグルの1283万ドルは、驚異的ですね。労働生産性とPERがともに高くなければ、こうはなりません。全社は製造業では限界があり、後者は将来の期待がなければ実現しません。
たしかに、日本には、少ないんですよね。任天堂ぐらいでしょうか。任天堂の従業員あたりの時価総額は、3.5億円ですね。
政府に眼を転じると、
現在の日本財政が抱える問題は、経済成長率の底上げによって解消するようなものではないということを銘記すべきである。p.134
とさすがに、悲観的な見方をしています。
年金問題に関する先生の見解は、以前紹介しました。「もはや止めることはできないから、続けるしかない」といのは、深刻な状況ですね。
第5章では、「法人税減税では日本経済は活性化しない」と専門家らしい指摘をしています。
で、結局どうするのというと、第6章で資本開国を薦めています。経済学者が考えると、こうなりますよね。
あとで整理したいと思います。
では。
【関連記事】
・「円キャリートレイドが導く悪夢」VOICE 2007/11p.135
・週刊ダイヤモンドの「超」整理日記(4月29日号P.164?)について
【参考】
IT Compliance Summitにおける野口先生の講演 2007/2