【本】ニッケル・アンド・ダイムド ☆☆☆☆

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実
NICKEL AND DIMED
B.エーレンライク 東洋経済 2006/8

 先日紹介した「現代アメリカのキーワード」に掲載されていたので、読んでみました。雑誌Timeにコラムを持っていた著者の“ワーキング・プア”体験ルポです。


 Kマートに行ってびっくりしたのは、めちゃくちゃ安い家具があることでした。僕は、最初にデスク・ランプを買ったのですが、ミスプリかと思うような値段がついていました。
 アメリカには、移民が大量に存在して、長持ちなんかしなくてもいいから、とにかく安いものが欲しいというニーズがあるんだと実感しました。
 こうした低賃金で働く人の暮らしは、楽でないとはわかっていたものの、こうして改めて体験記として読むと、何度も、本を閉じたくなる衝動にとらわれます。
 第3章は、「ミネソタ州でスーパーの店員として働く」です。2000年ごろでしょうから、ちょうど、私が留学していたころと重なります。
 留学する際に、住む場所の心配をするのですが、なかなか正確な情報が集まりませんでした。日本のように「駅前」に不動産屋がないのも原因のひとつですが、この本を読むと、不動産賃貸にこそ、賃金格差、人種、性別など、微妙な問題が背後に隠れているのがわかります。下層階級の暮らしを文にすることは、それなりにリスクがあるのだと思います。

P.164 ミネソタは日買うk的リベラルな州だと知っていたし、生活保護になっている貧しい人たちにも、ほかの多くの州より寛大だ。三〇分ほどインターネットで調べると、うれしいことに労働市場は需要に比べて供給が少なく、単純労働の求人が自給八ドル以上、ワンルームのアパートメントが400ドル以下で広告されていた。

 というのは、すぐにでもわかりそうなことだが、こんな風にズバっと教えてくれる人に会うのは、実際には難しかった。
 そんな筆者も、ミネソタでのウォルマート勤務では、数々の判断ミスをして、苦しい生活から這い上がれずに終わってしまいます。

P.203 貧しい女は?特に独身女性は、何らかの理由で一時的に貧困層にまじって暮らしている女でも?二重ロック付き、警報システム付き、夫付き、犬付きの家でクラス女たちより、恐れなければならないものが多いのだ。そんなことは、理屈としては知っていたはずだし、少なくとも聞いたことはあっただろうが、このとき初めて、身に沁みてわかったのである。

 日本も他の国のできごととして、看過できなくなってきているのではないでしょうか。

では。