生田武志 ちくま新書 673 2007/8
釜ヶ崎の日雇労働者・野宿者支援活動者のルポルタージュ。20世紀は難民の世紀だといわれたが、21世紀はホームレスの世紀になるかもしれないと著者は問いかけます。釜ヶ崎でどっしりと貧困問題に取り組む著者は、地震で日雇い労働者として働くなど、日本の”Nickel and Dimed”を完成させました。 まず、反省するのは、自分の無理解ですね。
釜ヶ崎の「酒盛りをしては道路で寝転んでいる」という雰囲気とはまるで違って、多くの日雇い労働者が現場ではほとんどクソ真面目な働き者ということに気がつき始めた。普通思われているのとは違って、日雇労働者の多くは現場で手を抜くということを知らず、「そこまでしなくてもいいのに」と思うところまで汗水たらして働いていた。p.47
野宿者の生活については、「82歳の野宿者」p.87が心を打ちました。シベリアで捕虜となり、強制労働に従事した藤井さんは、帰国後、日雇い労働者として働き、82歳になった現在は野宿生活を送っています。そのひとこと、
日本の捕虜になったと思ったよ。
が重く響きます。野宿者の多様化は、高齢者だけでなく、女性にも広がってるのも、驚きでした。
こうした人たちの生活環境の厳しさを伝えるのが、国境なき医師団が、日本に診療所を拓いていることです。
大阪の野宿者のおかれている医療状況は海外の難民キャンプのかなり悪い状態に相当する。
のだそうです。
第6章では、野宿者問題の世界の広がりについて触れています。たとえばアメリカは、
1年間でホームレスを経験した人数は350万人であり、そのうち子供は135万人である。p.205
など、日本よりもひどい数字が並ぶのですが、日本もそれに近い形になっていくのでしょうか。引き続き、勉強していこうと思います。
では。