Reimagining Capitalism How Business Can Save the World
Rebecca Henderson 2020
ハーバード教授による、資本主義論。邦訳『資本主義の再構築』利潤最大化し株主価値を最大化するのが唯一の目的なのか。代わりに、著者は資本主義が環境的現実、社会的正義、および民主的機関と調和することを提唱。政府の役割も重視していますね。
目次:
Prologue
- “When the facts change, I change my mind. What do you do, sir?”: Shareholder value as yesterday’s idea
- Reimagining capitalism in practice: welcome to the world’s most important conversation
- The business case for reimagining capitalism: reducing risk, increasing demand, cutting costs
- Deeply rooted common values: revolutionizing the purpose of the firm
- Rewiring finance: learning to love the long term
- Between a rock and a hard place: learning to cooperate
- Protecting what has made us rich and free: markets, politics, and the future of the capitalist system
- Pebbles in an avalanche of change: finding your own path toward changing the world.
Claudiaの要約は、こちら。
本書は、資本主義の抜本的な変革を提唱しています。従来の資本主義は、GDP成長と株主利益の最大化を最優先してきましたが、その結果、環境破壊や格差の拡大など、深刻な課題を引き起こしています。
著者は、企業が株主資本主義からマルチステークホルダー資本主義へ移行する必要があると主張しています。つまり、企業は株主だけでなく、従業員、顧客、サプライヤー、地域社会など、すべてのステークホルダーの利益を考慮する必要があるのです。
このようなシステムの転換には、政府による法制度の整備と、企業の目的や評価指標の変更が不可欠です。短期的な利益ではなく、長期的な持続可能性を追求する企業が報われる社会を実現することが重要となります。
資本主義のあり方を根本から見直す必要がある今、この提言は日本企業にとっても極めて示唆に富むものと言えるでしょう。
どこかで聞いたことある話ですが、本書でも日本について書いてます。
In Japan, for example, the “miracle” that remade Japan following World War II stressed lifetime employment, close relationships with suppliers, persistent investment over long time frames, and an almost obsessive focus on the customer.
p.155
そこに戻れとは言っていないですが、日本を含んだ先進国むけの画期的な解が、あるわけではありませんでした。
私の感想は、ハーバードで研究すると、こうなるだろうなという感じです。読んでいても民主党支持の高学歴者の影がちらつきます。トランプ候補を支持している有権者と話は通じなさそうです。
どんなに優れた経済政策も、実行しなければ意味ないのですが、先進民主主義国でおすすめ経済政策を採用するのは難しくなっているのを実感する本でした。