1997年 世界を変えた金融危機
竹森俊平 朝日新書 74 2007/10
東洋経済:2007年決定版 経済・経営書ベスト100 第4位。97年を長銀で迎えた私としては、思わず読んでしまいました。97年のことを活写するというよりも、「ナイトの不確実性」と中央銀行のあり方に論点がありました。
Frank Hyneman Knightは、20世紀前半に活躍したシカゴ大学教授。
経済における不確実性には、「その確率分布を推測することができる不確実性(これをナイトは「リスク」と呼ぶ)」と、「その確率分布を推測することが不可能な不確実性(これをナイトは「真の不確実性」と呼ぶ)」という2種類がある。P79
「リスク」は「利潤」の要因とはならないが、「不確実性」は「利潤」の要因となりえる。p.82
とし、企業家とは、不確実性にあえて立ち向かう人と考える。議論は、エルスバーグによる「不確実性プレミアム」に展開し、バブルへの認識に移っていきます。
バブルか、バブルでないか」は、所詮、「ナイトの不確実性」だ。それを判断する客観的な根拠などありえない。 p.154
そのときの中央銀行の対応は、グリンスパン議長の言葉を引用しています。
もしバブル崩壊の反動による景気後退が訪れたときには、その影響を打ち消し、望むらくは次の景気拡大までの円滑な推移を図る p.156
そして、金融危機が起こってしまった対応に話は進みます。
IMFのような第3者からの救援資金の投入を「ベイル・アウト」というのに大して、「再交渉」の方式は、当事者(つまり貸し手)の救援(返済の猶予はそのような性格を持つ)によって問題の解決を図るので、「ベイル・イン」と呼ばれる。p.191
ベイルインが成功するためには、債権者が限定される必要があります。なぜなら、多数の場合には、フリーライドが深刻になり、交渉の当事者が不利になるためです。ベイルインが成立する条件がそろっていたケースとして、住専とLTCMの例が比較されます。こういう視点でみると、日本の不規則対応が鮮やかに浮き彫りになりますね。なるほど。
サブプライムが話題になり、日銀総裁の人事が話題になる今こそ読む価値のある本だろうと思いました。
では。
【参考】
・『資本主義は嫌いですか』