おくりびととしてのFDIC

ファーストレパブリック銀行の総資産は、2,330億ドル(31兆円)。地銀首位のふくおか銀行(29兆円)と同規模です。よくこんな救済を数日でまとめられるなと思って、米連邦預金保険公社(FDIC)の決算を読んでみました。

(単位:百万$)

 2007年の収入(Revenue)は3,196百万ドル。当期純利益(Net income) が2,105百万ドルも残り、基金の残高は52,413百万ドルまで増えました。これは、保険対象となる預金の1.22%に相当。当時の加盟会社は8,534社。そのうち、懸念先が76社で、懸念先の資産が22,189百万ドル。破綻したのは3社で、破綻先の総資産は2,615百万ドルでした。

 最初に気づくのが、毎年破綻処理をしていることです。ま、これだけ金融機関があれば、毎週破綻処理していることになり、「慣れている」といえます。

 次に、破綻先が急増するのは10数年に1度ということです。

 たとえば、2007年にはわずか2,615百万ドルだった破綻先の資産が、リーマンショックの2008年には371,945百万ド①と140倍になっています。FDICは2年間に渡って処理にあたり、105,048百万ドル(14兆円、1$=135円)②かけて処理したともいえます。②÷①=28%。破綻先の債権の3割ほどは回収できなかったとみておけばいいでしょう。

 巨額の費用ですが、加盟会社の保険料で処理されるのであれば、金融村の話です。さすが、世界最大の金融市場とでもいいましょうか。

 今年破綻した3行の資産合計は552,340百万ドル(報道ベース)です。

 3割が損失と仮定すると、165,702百万ドル(22兆円)。基金は128,218百万ドルなので、マイナスになるでしょうね。保険料率を上げて、カバーするのだと思います。ただ、これより大きな銀行の破綻となると、政府の出番になるのではないでしょうか。債務上限問題は、タイミングの悪い話になってしまいました。

 日本に戻ると、もう少し銀行の新規参入と退出数を増やして、預金保険機構が、破綻処理をスムーズに行えるようにしておいた方がよかったのかなと思いました。25年ぶりに破綻処理が来て、組織に経験者がいないというのは、いかにもまずいので。