【本】ABLの理論と実践

ABLの理論と実践 (事業再生研究叢書)

事業再生研究機構による動産担保貸し出しに関するシンポジウム(2007/5)をまとめた本。ABLが普及するためには、政府の取り組みだけでなく、司法側、銀行側、事業者側のノウハウの積み重ねが必要なのがよくわかります。スピーカーは、以下のとおり。

開会の辞にかえて
「事業再生からみた動産・債権担保」 埼玉大学大学院客員教授木下信行氏
Ⅰ 基調講演
1 . 「ABL をめぐる最近の金融行政の対応について」 金融庁監督局銀行第二課課長補佐柳瀬護氏
2 . 「ABL 研究会報告書の概要と協会設立について」 経済産業省経済産業政策局産業資金課課長補佐林揚哲氏

Ⅱ 個別報告
1 . 「ABL スキーム① 日本政策投資銀行の場合」 日本政策投資銀行企業ファイナンス部調査役松木大氏
2 . 「ABL スキーム② 商工中金の場合」 商工中金組織金融部・審査第一部担当部長兼法務室長中村廉平氏
3 . 「動産の買取・処分業務の実際と今後の展開」 ㈱ゴードン・ブラザーズ・ジャパン取締役フランク・モートン氏
4 . 「動産・債権担保の最新判例分析と法的問題点」 弁護士(ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所
坂井・三村法律事務所(外国法共同事業)) 粟田口太郎氏
5 . 「事業再生をめざす債務者側からみた将来債権譲渡担保の問題点」 弁護士( 三宅・今井・池田法律事務所) 蓑毛良和氏

総括

弁護士(東京富士法律事務所) 須藤英章氏

p.58には、法人企業統計による日本企業のバランスシート(推計値)が掲載されています。売上債権が224兆円、棚卸資産は105兆円と計算されています。掛け目を考慮しても、邦銀の融資残高(400兆円)の一部を担うのに十分な金額ですね。

昆布、素麺、豚、ワイン、野菜など豊富な 実行事例が紹介されており、ABLを進めていくには、政府、弁護士、金融機関、事業会社の努力が必要なのが、具体的にわかります。

特に、興味深かったのが、ゴードン・ブラザーズの取り組みですね。アメリカ最大のリクイデーターなのですが、ABLの3つのステップ、デューデリ(適正評価)、資産の再評価、現金化を支援する様子がわかります。同社に頼んだ方が、在庫処分が高くできるんですね。たとえば、小売業であれば、その道のプロだから、そこに1週間、閉店セールをやらせればいいじゃないかと思うのですが、資金繰りの問題などがあり、そうではないんですね。

引越しは、引越し屋に任せたほうがうまくいくという例えがでてくるのですが、 ABLでも、そうした専門家が育つ必要があるのだと思いました。

では。