救える「いのち」のために 日本のがん医療への提言
山本孝史 朝日新聞社 2008年1月
本会議で、自らがガン患者であること告白、がん対策基本法成立を訴えた山本孝史参議院議員の本。2006年5月22日の参議院本会議における著者のスピーチは、憲政史に残るものとなりました(YouTube参照)しかし、山本たかし議員は、2007年12月、胸腺がんのため58歳で亡くなられました。本書は、議員生命を賭けた遺書と言えるものです。
いまや、国民の2人に1人がかかり、3人に1人が命を落とす癌。これほど、国民に深くかかわる病にもかかわらず、その対応が遅れていることを切々と訴えています。たと えば、抗がん剤の専門医はアメリカには1万人いるのに対し日本は50人足らずと言われています。ガン治療すでに医師だけで解決できる問題ではなく、政府が 一体になって取り組まなければいけないことを訴えています。p.140では、こう訴えます。
病状が進み、治療の選択がせばまる中で、私がつくづく思うことです。
それは、「がん患者がもっとも必要とするものは、寄り添ってくれる人の存在である」ということです。医療者はもちろん、今の社会はみんな忙しすぎるのではないでしょうか。病気で困っている人に、目を向ける余裕なんてないという人もいるかもしれません。
そういう人にこそ、あえて、「がん患者の思いをくみ取ってほしい」といいたいのです。なぜなら、二人に一人ががんにかかる時代には、誰もが、がんの当事者やその家族になるからです。
山本議員は、どのような思いで、原稿に向かったのかが伝わってくる一文です。
半世紀前の日本では、8割が自宅で亡くなり、病院で亡くなるのは1割でした。しかし現在、病院で亡くなる人が79.7%、自宅は12.2%と逆転しています(06年人口動態調査)。 癌治療は、もはや、個人で対応できる問題ではなく、社会のしくみとして考えなければいけないのですね。普段、経営書ばかり読んでいる私ですが、人生についても、少し考えなおすキッカケになりました。
では。