アフター・アメリカでボストンのコミュニティを描き、サントリー学芸賞などを受賞した著者が、アメリカ全土のコミュニティに対象を広げて、社会を考察した本。梅田望夫さんのブログで紹介されていたので、読んでみました。
アメリカを語るとき、必ずと言っていいほどまとわりつく「多様性」という枕詞。それは単に自然環境や、人種や宗教といった社会構成における「多様性」を指すのではなく、「アメリカは○○である」という定義づけを常に拒むカウンター・ディスースが存在する点にこそ特徴がある。p.222
本書では、宗教団体のコミュニティ、ゲートで囲まれた高級住宅地、農業の田舎町、巨大教会のコミュニティ、東サモ ア、刑務所の町などを描くことで、アメリカの多様性を描き出しています。たしかにどこに住んだかで、アメリカに対する印象は変わりますね。NYであれば、アグレッシブなアメリカを思うでしょうが、ミネソタに住むと、逆に日本に近いのではないかと思うときもありました。もし、これからアメリカに住む人がいたら、こういう本でその多様性を理解するとよいと思いました。
とはいえ、今回の取材と通して、そうした多様性を貫く背骨のごとき存在があることを強く意識した。いや、思い知らされた、といってもいい。
それは資本主義や市場主義である。p.222
格差を象徴するデータは、こちら。
“The New York Times”(2007/3/29付)によると、上位10%の富裕層が所得全体に占める割合は、48.5%とほぼ半数に達し、富裕層のみの所得が一割り増しとなった。
一方、米住宅年開発省は、公園や道路などで寝泊りしているホームレスが、推計で75万人に達していると発表している。単純に比較はできないが、その数は日本の約30倍に相当する。p.226
著者は、こうした社会的な統合が困難であるがゆえに、「大きな物語」を渇望するとしています。p.227。それが、自由、平等、民主主義、アメリカンドリームなのだそうです。オバマ候補のメッセージが、支持者に響く背景が、こうしたコミュニティの多様性にあるんですね。
では。
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