小峰隆夫 日経 2007・10
週刊東洋経済『2007年決定版 経済・経営書ベスト100』で6位になっていたベストセラーです。ドラッカーは、未来を予測の基礎を人口動態においていましたが、アジアの未来も、人口動態からかいまみることができます。
この本の鍵となるのが、2つのコンセプト。ひとつは、人口ボーナス。人口転換によって訪れる、マクロ経済に好影響を与える人口動態。合計特殊出生率が低下して、子供が増えなくなり、かつて増えた子供が大人になって生産年齢人口が相対的に大きくなる。
もうひとつは、人口オーナス(demographic onus)。人口ボーナス後に訪れる、マクロ経済に悪影響を与える人口動態。潤沢だった労働者が高齢化し、かつ少子化が進んで生産年齢人口が相対的に小さくなる状態です。
大きなメッセージは、この2つの局面は、どの国にも現れるということ。成長著しいアジアも、その例外ではありません。たとえば、中国の人口ボーナスは2015年頃に終わります。ラビ・バトラ氏が、破滅を予告するとホントかなとか思ってしまうのですが、人口動態から説明してもらうと、ストんと受け入れられます。以下、印象に残ったデータです。
- 2050年の世界人口は94.2億人(p.65)。
- 人口が減っている国に住む人が世界人口に占める割合は、2005年の5.1%から2050年には25%になる(p.67)。
- 英米を除いた主要国は、軒並み人口減少に入る(p.68)。
- 中国は、2020年代後半に人口が減少に転じる。総人口のピークは2025年。2050年には、12.6 億人に。
- インドは2025年までに世界最大の人口大国になる。2050年には17.3億人となる。
p.72に世界の地域別人口シェアが掲載されます。2050年には、アフリカのシェアが20%を超えてきます。
日本は、2050年に老齢人口の割合が40%になるのですが、人口ボーナスの使い方は、非常に効率がよかった。むしろ、中国は、一人当たりのGDPが高くならないうちに、人口オーナスに入る可能性がある。そう考えると、日本の将来についても、それほど悲観的にならなくてもいいのだと思います。
逆に、今後人口ボーナスの恩恵を受ける人口大国11カ国をp.209で分析しています。 その中で2050年にもっとも経済規模が大きくなるのはパキスタン。現在のASEAN主要6カ国と同じ経済規模。こういう数字を見ると、総選挙の注目度が納得できたりします。
では。