新自由主義の復権 – 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書)
八代尚宏 中公新書 2011/8
週刊ダイヤモンド「2011年のベスト経済書」2位。著者は、安倍・福田両内閣時代の経済財政諮問会議メンバー。何か新しいことを主張するというよりも、経済学のコンセンサスをまとめた本。昨年はに目を奪われてしまいましたが、日本にはそれ以外にもやるべきことが山とあるのがわかります。
著者の問題意識は次の通り。
問題なのは市場競争の行き過ぎではなく、それと対になるべき、政府による生活の安全網の構築が不十分だったことである。 p.iv
戦前は欧米型の市場経済だったのが、1940年体制になり、田中角栄首相による1970年体制が確立した「社会主義」が描かれています。
一方、自由競争を尊重する思想が、日本古来から存在することに触れています。平清盛、織田信長、大阪商人など。福原遷都の失敗にも触れています。大河ドラマを観る方には、興味深いかと。
もっぱら軍事力で領土を広げることが目的であった時代に、日本の限られた土地を奪い合うことは不毛であり、むしろ宋との自由貿易を通じたパイの拡大を目指すという平清盛の思想は画期的なものであった。p.64
こうした考えを前提に、タクシー参入規制、派遣法、司法試験改革、郵政民営化、地方分権、構造改革特区、財政再建、年金改革、医療改革、労働市場改革、農業政策、保育、都市再開発、TPPなどを取り上げています。やることは山とありますね。