【本】脱・道路の時代

脱・道路の時代

上岡直見 2007/10 コモンズ

道路特定財源が話題になっていますが、日本の道路について理解を深める好著。道路について調べだすと、巨額かつ複雑なので、すぐ投げ出したくなりますね。それでも、我が家のまわりでは、3月の年度末が近いせいでしょうか。道路工事が続いています。本書は、「造るから使う」というわかりやすいコンセプトで道路のあり方を説明してくれており、身近なデータから、道路のあるべき道路の姿を教えてくれます。

 日本の道路の構造面での技術は、本州・四国架橋にみられるように世界の最高水準にある。交通ネットワークを計画するシミュレーション技術などの理論面でも、再選他とは断言できないものの、欧米先進国に比べて遅れをとってはいない。ところが、これらの成果を生かすべき実際の道路事業となると、関係者間での合意形成や情報公開、環境対策などの点で、きわめて稚拙である。 p.3

と、「はじめに」で書かれています。道路は、非常に多くの人にかかわる問題です。ドライバー、石油会社、自動車メーカー、建設会社、地方政府などなど。それぞれ利害が衝突しますので、審判が必要です。その役割は政治家なのでしょうが、むしろ彼らがプレイヤー、しかもフォワードとして、走り回ってしまっていますね。

日本の道路投資の妥当性については、さまざまな報道があります。本書に書かれているデータのひとつは、こちら。

 国内の全ての道路を合計すると、面積にして13100平方kmになり、住宅地の11000平方kmより多い。p.98

そうですか。超えちゃいましたか。

もうひとつ新鮮だったのが、p.25の道路容量と自動車走行量のグラフ。

約30年間で、道路容量が約1.5倍増加したものの、自動車の走行量はそれを大きく上回り、約2.5倍に増加している。

ガソリン税という走行量に応じて支払われる税金があるのに、道路整備が追いついていない。道路には、それを供給すると、新たな需要を呼んでしまう特徴があるんですね。無料で快適に走れる道路を造ると、お父さんだけでなく、お母さん、娘、孫と個別に車を持つようになる。「必要な道路」は、容易に解消されないわけです。

また、これから、高齢化社会を迎えると、道路を作っただけで、問題が解決しなくなるというのも、傾聴すべき指摘だと思いました。先日、ご紹介した老いるアジア によると、2050年の老齢人口は40%。道路があっても、運転できるか心もとない社会になっていそうですね。道路を整備すればするほど、分散して住む社会ができる。それが40年後に正しいチョイスなのか…。

民主党、岡田さんの質問は、鋭かったのだなぁと思いました。

では。