慶大の安宅教授が、日本の取るべき指針として、物魂電才を提唱しています。
そのとおりですが、それができない日本企業がほとんどなのではないでしょうか。後輩が先輩の言うことを聞く直系家族文化の下では、いままでのやり方を踏襲するからです。長期的な人間関係をベースにして継続的な改善を良しとするものづくりと、タスクベースで組む相手を変えて破壊的な創造を目指すコンピューティングの世界がN極とN極のように反発してしまいます。
私がおすすめしたいのは、「ダッチ・サンド」(Dutch Sandwich)です。直系家族的な日本企業がいきなりシリコンバレーに行っても、話にならないでしょう。直系家族的なドイツと、絶対核家族的なイギリスの間で揉まれたオランダなら、どちらの文化も理解できます。
たとえば、日本のものづくりにコンピューティングが組み合わさった例はロボットでしょう。ファナックのような工場用ロボットでは、世界を席巻していますが、ドラえもんが出てくるまでには時間がかかりそうです。
以前、オランダでロボットを障害者向けのケアに活用していることをお伝えしました。
オランダInnovation PlaygoundのMike van Rijswijk社長は、日本のロボットが障害者のケアに役立つことを見抜き、さまざまなステークホルダーを巻き込んで、現場へのロボット導入を実現しました。
多くの人にとって、ロボットそのものが革新的に見えますが、実は革新的なのはロボットではなく、主にロボットを医療に導入する方法にあるのです
という彼の言葉は、日本の物魂電才に必要なことを的確に指摘していると思います。
高価なロボットを現場に導入するために必要なファイナンスの仕組みを作ったり、大学、NPOなどとの協力を実現するネットワーク力が重要なのですね。
オランダには、ロボットメーカーはないのですが、社会全体を俯瞰し、どこにどのように落とし込めばよいのか見定める力があります。物魂がある日本企業は、オランダをはさんで(ダッチ・サンド)取り組めば、電才を活かすきっかけになるのではと思っています。