東日本大震災から8年。私がシンガポールに来てから7年になろうとしています。シンガポール企業のPMIもやりましたし、日系企業の幹部研修もやりました。日本から3年ごとに現法社長を派遣して海外展開するような時代でないのはあきらかです。Facebook時代には、市場は一瞬にして変わってしまいます。現地語が理解できない社長の反応が遅れれば、致命傷になりかねません。いくつか気づいたことをメモします。
最大の教訓は、変わるべきは本社ということです。現地の人材を抜擢しても、本部が彼女の力を活かせなければ何にもなりません。地域統括会社や本社に、ローカル社員、あるいは5-3-1基準の日本人がいることが前提になります。
次が人事制度です。先日も、アムステルダムのラーメン屋に行ったら、スタッフ全員日本人。オペレーションは日本語。年長の男性が厨房から接客の若い女性を叱っていました。ラーメンの品質は完璧ですが、1,600円。オランダは日本から9,000km 離れていますが、日本人は、ほうっておくと、こういう組織を作ります。中華料理屋も、モロ中国な組織なので、日本人だけではありません。しかし、異文化にふれる機会が少ないので、文化を客観視する訓練は必要だと思います。
私の持論ですが、エマニュエル・トッドの家族類型の理解は、重要だと思います。権威を認めるか、結果の平等を重視するかによって、人事制度を柔軟に現地化すれば良いと思います。日本は直系家族なので、同じ類型の韓国、台湾、シンガポールに展開する場合は、あまり大きく変えない方がむしろ良いこともアリえます。真逆の平等核家族なベネズエラでは、トップが平社員の意見を聞きすぎなぐらいに聞き、社員の給与格差も、ほどほどにする工夫が必要です。
同国の政治的混乱は、非常に参考になる例です。 2018年5月の大統領選以降、誰が大統領なのか良くわからない状態が9ヶ月続いています。 直系家族な北朝鮮(上下関係を重視する)で、9ヶ月も将軍様がわからないということが起こるでしょうか。平等核家族は権威を良しとせず、個々人の発言を重視します。物価が100万%上がり、GDPが35%減少。失業率が35%。150万人が国外脱出し、全国が停電ともなれば、直系家族的にはとっととトップを変えろとなると思います。平等核家族は、話をまとめるのに時間がかかります。
特に、報酬については、日本のような賃金テーブルでは、有能なローカル社員を引き止められません。都銀ですら苦労しているのですから、他の企業はなおさらです。
こうしたノウハウが、会社を超えて共有されづらいというのも、日系企業の特徴だと思います。出身校や、県人会が情報共有の役割を果たしていますが、ここはお金を払って、ノウハウを「買う」という努力も必要かと。たとえば、製造業では、理系男子が上司であることが多く、ローカルの優秀な女子社員がロールモデルを見つけられないということがあります。こういうときには、女性の役員を排出している他の産業に出向させるなどして、女性のキャリアを支援することも必要でしょう。
ローカル社員に優秀な社員が居ないという声も聞きます。それも、自らを顧みることが必要です。直系家族な会社は、従順な社員を採用し、昇進させているのです。現状に警鐘を鳴らし、新たな指針を示し、社員を鼓舞するのが指導者の仕事ですが、日本人を(頭ごなしに)批判するようなローカル社員は、もともと居場所がありません。
では。